ペダル踏み換え考

14 3月 2017

アクセルとブレーキを踏み換えることは想像以上に面倒くさく、また高齢者にとっては大変な作業です。わたしは左足ブレーキシステム(ゴーカート ブレーキ)を考案して以来、ペダル踏み間違い事故に関連してこのことを考え続けてきました。

わたしは、ペダル踏み間違い事故の直接原因が『ペダル踏み換え』にあると考えています。

こんな事例があります。わたしが航空事故調査官だった頃、着陸してから地上走行中に車輪を自分でUPしてしまい、その場で擱座してしまった航空事故が何件かありました。これはあくまで小型機での話であり、大型機は安全装置(エアグラウンドスイッチ 車輪に取り付けられており、車輪に機体の荷重がかかっている時は地上と認識する装置)があるので車輪上げ操作しても車輪は上がらないようになっています。

あとでパイロットに話を聞くとこういう話でした。以下:

『フラップとギア(着陸装置)を間違えました』。着陸速度を低くできるフラップ(高揚力装置)は、どんな飛行機でも着陸時に使われます。具体的には翼面積を大きくする装置です。一旦着陸すれば、必要がないのですぐ上げてしまいます。しかし、フラップをあげようとして何故ギアを上げてしまうのか?しかも、フラップとギアの操作レバーは形も場所も相当に違います。何故それを間違えるのか?

実は双方とも下げるときと上げるときの操作が同じなのです。人間はどうもそのようなときに間違えるようです。ペダル踏み間違い事故でよく問題となっている自動車のアクセルペダルとブレーキペダルの操作が同じなのとよく似ています。

画像出典:Wikipedia 写真のビーチクラフトA36はギアレバーとフラップレバーが近い位置にあります。両方ともフラップ上げ、ギア上げは同じ操作です。しかし、判っているはずなのに無意識にやってしまいます。何故? それが人間です。無意識にというのがキーポイントです。

わたし自身の失敗例ですが、同様な経験があります。クルマの例です。トヨタプリウスというクルマを運転中のことです。このクルマはパーキングポジションが特殊な構造でパーキングポジションスイッチになっています。つまりスイッチを指で押すシステムとなっています。勿論クルマが完全に停止してから操作するようになっています。このパーキングポジションスイッチの約30cmくらい左にエアコンスイッチが設置されています。双方とも押して操作するようになっています。走行中、エアコンのスイッチを入れようとしてなんとパーキングポジションスイッチを押してしまいました。同じように『押す』という操作が間違いの原因となったと思います。『ピピッ』と音がして安全機能が働きパーキングポジションには幸い入りませんでしたが、もし、高速走行中入っていれば、容易に大事故に結び付いたと思います。

画像出典:Wikipedia トヨタ自動車 トヨタプリウスのコンソール部分の写真です。Pと書いてあるスイッチがパーキングポジションスイッチです。エアコンのスイッチはその左斜め上にあります。

上空ではパイロットの3割頭といって、頭がの働きが少し悪くなるということが昔から良く知られていますが、多分クルマを運転中にも同じことが起こるのだろうと思います。これは人間の短期記憶容量の少なさに問題がありそうです。例えば、人間は同時に複数のタスクを処理することは非常に困難です。クルマを運転中に携帯電話で話しながら運転すると容易に赤信号を見落としたりします。飛行機の操縦も、同時に複数のタスクを処理しなければならないことが多々あります。そのため大型機では常に2人で操縦を分担しながら飛行しています。

ペダルの踏み間違いは、このようなことから発生するのではないかと思います。とすれば、人間として起こるべくして起こってしまうことになります。

このペダルの踏み間違いを防止するためには、ブレーキの操作方法を変える、ブレーキの操作肢体(例えば、右足から左足)を変える、あるいは、手動スロットルシステムのようにアクセルは手でブレーキは足(右)で操作するシステムにすることが効果的です。

 

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