ペダル踏み間違い事故はほとんど(96%ー米国ノースカロライナ州警察データベース 2000-2009 統計より)何気ない状況より発生しております。それだけに運転者は、車体の急加速による恐怖から脳の機能不全を起こし、生理的反射運動によってアクセルを踏み続けることが発生します。
事故前の運転状況 件数 割合(%)
前 進 929 39%
駐 車 時 600 25%
後進(他の操作に優先) 254 11%
右折時(左ハンドル車) 119 5%
減速または停止 116 5%
左折時(左ハンドル車) 113 5%
駐車枠からの出発時 75 3%
路肩からの出発時 49 2%
走行レーンでの停止 27 1%
走行レーンから駐車へ 19 1%
道路上の障害物回避時 15 1%
Uターン時 15 1%
レーン変更または合流 12 0%
追い越し時 3 0%
走行レーンからの出発 3 0%
その他 59 2%
総計 2,408 100%
わたしは平成26年にこのペダル踏み間違いによる暴走を再現しようとして、約50人による実車実験を行いました。その結果、実験で暴走状態になった人は一人もいませんでした。実験という冠がつくと『ペダル踏み換え』をより意識してしまうためにひとはペダル踏み換えをほぼ間違いません。あるいは、間違ってもそれを意識しているために『暴走』には至りません。
なお、実車実験の内容は以下の通りです:
コンビニエンスストアの平面駐車場を想定し、駐車するために歩道上がりの段差を超えるために運転者(被験者)がアクセルを操作したところで助手席の実験者が補助アクセル(特別装置)運転者に知られることなく操作したときの運転者の挙動を観察するというものでした。このとき運転者が誤ってアクセルを操作すれば『暴走』となります。ただしこれは所謂運転者に『外乱』を与えてアクセルの誤操作を誘発するというものでしたが、ペダル踏み間違い事故は特に急がない平穏な状況から発生しているのが大部分(96%)です。
画像出典:大野一郎
画像出典:大野一郎 実験車両と補助アクセル装置
ただ、ペダル踏み間違い実験の方法としてシミュレーターの走行モニター画面の指示をみてアクセル・ブレーキを頻繁に踏み換えるものや、体を振り向けてバック走行をしながら、実験者の指示によってアクセル・ブレーキを頻繁に踏み換えるものは、容易に被実験者の間違いを誘発させるものであり、現実のペダル踏み間違い発生とは状況が乖離していると思わざるを得ません。
画像出典:大野一郎 九州産業大学松永研究室
繰り返しとなって恐縮ですが、ペダル踏み間違いは、その96%が『走行中』かつ特段『急を要さない状況』で発生しております。
上記の実験は現実のペダル踏み間違い発生状況からはかなり乖離した状況でのアクセル・ブレーキの使用状況であるため再現実験とは言い難いと考えられます。
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