交通刑務所とはなんでしょう。わたしたちの理解では、交通事故を起こして人を殺傷してしまったひとが刑事責任を問われて入所するところですよねっ。つまり「過失」が刑事罰となるのです。
いったいどういうところなんでしょうか? 調べてみました。
【知っておきたい】 交通刑務所に行くとどうなってしまうのか
交通刑務所とは?
交通刑務所とは、交通に関わる犯罪を犯した人を収容する刑務所になっています。
実際には「交通刑務所」と明確に定義されている訳ではなく、交通事故で懲役や禁錮の刑に処せられた人を専門的に収容しているため、交通刑務所と呼ばれています。
入る基準はあるの?
道路交通法を違反したからと言って、信号無視などでも刑務所に収監される訳ではありません。どんな場合に、交通刑務所に入るかと言うと、重度の過失があったり、悪質な道路交通法違反で、実刑判決を受けた人が収監されます。
では、刑事処分で実刑判決が出るまでには、どんな工程があるかご説明します。最初に警察での取調べを受けて、書類送検または身柄拘束。次に検察庁での取調べがあり、起訴、または不起訴が決定します。
起訴された場合、略式裁判手続きで罰金になるか、正式裁判手続きで罰金、または懲役・禁固(執行猶予が付く場合あり)の刑が処されるのです。
略式裁判手続または、正式裁判手続きで、罰金になった場合や、執行猶予が付いた場合は、刑務所に入ることはありあません。
正式裁判手続きで、執行猶予無しの懲役・禁固の刑になった場合に刑務所に収監されると言うことです。交通事故の判決では、重い刑であっても執行猶予が付くことが多く、交通刑務所に収監されることは、比較的少ない事例となります。
具体的な罪名の例をあげると以下のようなものが挙げられます。
・過失運転致死罪
・危険運転致死罪
これら2つは、他人を殺す意図はないことが前提の罪になります。意図的に行ったものは、「殺人罪」など罪状が異なります。
分かりやすい行動例を挙げると死亡事故・飲酒運転・ひき逃げ・あおり運転(死亡事故)などです。
また交通刑務所は、全国に2箇所しかなく収容人数に限りもあります。過失が大きい交通事故や刑期が長期に渡る場合、一般の刑務所に収監されることもあります。自動車雑誌カーナリズムから:
刑期、また面会はあるのか
この項目では、死亡事故を起こして、交通刑務所に収監される際の刑期と、面会の有無や条件について詳しく説明していきます。
■死亡事故の場合の刑期は?
過失運転致死の場合は、「7年以下の懲役若しくは禁錮又は100万円以下の罰金」
危険運転致死の場合は「1年以上の有期懲役、15年以下の懲役」
このようにどちらも、判決によって刑期が異なるので、一概には言えません。これに加えて飲酒運転での事故になると、15年を超える懲役になる事もあります。
刑務所の規律を破らずに模範囚になれば、仮釈放される可能性もあります。仮釈放とは、実際の刑期の前に受刑者を刑務所から釈放することです。仮釈放中に違反をしたり、犯罪を犯すと刑期が追加されることがあり、刑務所に戻されます。
仮釈放は刑期の3分の1を経過すれば可能とされていますが、実際には刑期の3分の1で仮釈放が適用されるケースはほとんどありません。おおよそ刑期の8割経過した程度で仮釈放が認められることが多いです。また無期刑の場合には10年を経過した時に可能となります。
面会はできるのか
交通刑務所での面会は、比較的自由に出来ます。土日祝日を除く平日の日中が基本となりますが、時間は収監される刑務所によって異なります。月◯回のように面会回数に規定はありませんが、1日1組、30分以上になります。
受刑者とその生活について
交通刑務所に収監された場合は、どのような生活を送るのでしょうか?食事や生活、女性の場合はどうなるかなどを詳しく説明していきます。
食事や生活について
刑務所のご飯は美味しくないと良く聞くと思いますが、映画のように極端に食べられないほどの食事が出て来ることはありません。ご飯に関しては一般の刑務所と同じですが、栄養バランスを考慮して作られているため、私生活で食べているご飯より味が薄いのが特徴です。
デザートやジュースなどが出てくることもあるので、食事に関してはそこまで劣悪なことはないと考えられます。
また部屋も単独房です。単独房とは受刑者が1人だけ入る個室で、水洗トイレ、洗面所、就寝スペースが確保されています。刑務所と言えば鉄格子を連想される方も少ないくないと思いますが、交通刑務所に鉄格子はありません。全面ガラス張りになっています。
カビが生えていることや、衛生面の問題もないので、その場所が刑務所であることに良い意味で驚く人も多いです。
一般刑務所と同じように、交通刑務所でも受刑者には午前中と午後に刑務作業が与えられます。ただし禁固刑の受刑者には刑務作業の義務がありません。
多くの場合刑務所内の工場に出向き、配線器具などの組立・加工作業が主な内容です。1日あたりの作業時間は6~7時間になり、週休二日制。夕食以降は自由時間で、将棋や囲碁など娯楽を楽しむことが出来ます。
女性の生活は?
女性用の交通刑務所は無いため、女性は交通事故での実刑判決が出た場合でも、女子刑務所もしくは女子収容区がある刑務所に収監されるのが基本となります。
女子刑務所も数が少ないため、収容できる人数には限りがあります。そのため、過失運転致死罪であっても殺人罪であっても、罪状に関係なく同じ部屋、同じ工場に収監されることになります。
交通刑務所と生活内容や刑務作業に差はありませんが、女子刑務所では、女性しか収監されていないため、上下関係や悪質ないじめがあることを告白されている方もいます。
交通刑務所は自由度が高い??
交通刑務所での生活は、一般刑務所と比べ比較的自由度が高い寮もあります。受刑者の寮は4段階に分かれていて「1.新入寮」「2.準開放寮」「3. 開放寮」「4. 希望寮」があります。
通常の刑務所では、房の出入り口には鍵がかけられているのが普通ですが、交通刑務所の解放寮、希望寮では、房に施錠などはされておらず、出入りは自由です。ただし他者の房に出入りすること、就寝以降の自由行動などは出来ません。
とは言え最初から解放寮で自由な生活を送れる訳ではありません。スタートは新入寮となり、独房で施錠もあります。そこから徐々に自由度が上がり、解放寮や希望寮などに移項する流れとなります。
普通刑務所とのちがい
普通刑務所との大きな違いは、交通関連の更生に力を入れているところです。交通安全や法令についての学習や、アルコール依存などがある場合も更生プログラムが用意されています。
交通刑務所に入ると言うことは、高確率で免許書を剥奪されているため、刑務所出所までに仮免許を取得することも可能になっています。社会に出て困らないようにこのような配慮がなされていることは、救いでもあります。
また交通刑務所には一般刑務所と違い、高い塀に囲まれていないのも特徴的です。交通事故の場合、計画的に犯した犯罪ではないことが多く、再犯率が低いのと刑期が短い受刑者がほとんどのため、脱獄するメリットがあまりないことも解放的処遇の理由になっていると言われています。
全国に2つしかない交通刑務所の所在地とは?
交通刑務所は全国に2箇所しかありません。1つは千葉県にある市原刑務所ともう1つは神戸にある加古川刑務所です。
昭和40年代の交通死亡事故の増加に伴い、千葉県市原市に交通事犯受刑者を中心に受け入れる市原刑務所ができたことが、交通刑務所が設立されるきっかけとなりました。
市原刑務所
市原刑務所は千葉県にあり、住所は「千葉県市原市磯ヶ谷11-1」です。
・禁錮刑を言い渡された者(I指標受刑者)
・執行刑期が10年未満で犯罪傾向の進んでいない男子26歳未満の受刑者(YA指標受刑者)
・執行刑期が10年未満で犯罪傾向の進んでいない男子受刑者(A指標受刑者)
・交通区は残りの受刑期間が5年未満で、脱走・自殺の恐れがない受刑者を対象にしている。
市原刑務所は基本的に刑期の長いものは収容されない、刑務所となっています。そのため数ヶ月の受刑者も多くいるのです。
居室は大きく分けて3つの建物に分かれ、それぞれに房があります。最も規律が厳しい場所は単独室棟となっていて、新入者や規律違反を起こすとこの房に入ることになります。
一部を覗き高いフェンスや鉄格子などはなく、休日には散歩や運動できるだけのスペースがあります。しかし市原刑務所はMAXでも収容定員が463人となっているので、大きな刑務所ではありません。通常であれば200~300人ぐらいが収容されています。
市原刑務所のスケジュールは以下の通りです。
市原刑務所のスケジュール
6:30 | 起床・朝食 | |
---|---|---|
7:50 | 作業開始 | |
10:00 | 休憩 | |
10:05 | 休憩終了・作業開始 | |
12:00 | 昼食・休憩 | |
12:30 | 就業 | |
14:55 | 休憩 | |
15:00 | 休憩終了・作業開始 | |
16:30 | 作業終了 | |
17:00 | 夕食 | |
~21:00 | 余暇時間 | |
21:00 | 就寝 |
■加古川刑務所
加古川刑務所は兵庫県にあり、住所は「兵庫県加古川市加古川町大野1530」です。
・禁錮刑を言い渡された者(I指標受刑者)
・執行刑期が10年未満で犯罪傾向の進んでいない男子26歳未満の受刑者(YA指標受刑者)
・執行刑期が10年未満で犯罪傾向の進んでいない男子受刑者(A指標受刑者)
・女子収容区(女区)はW指標(女子収容施設)
・交通区は残りの受刑期間が5年未満で、脱走・自殺の恐れがない受刑者を対象にしている。
加古川刑務所は、女子受刑者を収容するための「女区」と交通事犯の受刑者を収容するための「交通区」があります。それらの区では一般受刑者と分けられて収容されています。
収容定員は、1,281人と多く内訳は、一般区961人、交通区120人、女区200人です。
市原刑務所と比べると、広い刑務所と言えます。
加古川刑務所のスケジュールは以下の通りです。
加古川刑務所のスケジュール
6:30 | 起床 | |
---|---|---|
6:50 | 点検 | |
7:00 | 朝食 | |
7:25 | 出室 | |
7:45 | 作業開始 | |
12:00 | 昼食・休憩 | |
12:30 | 作業開始 | |
16:25 | 作業終了 | |
16:50 | 点検 | |
17:00 | 夕食 | |
~21:00 | 余暇時間 | |
21:00 | 就寝 |
まとめ
以上交通刑務所での食事や生活、面会の有無、刑期について詳しく説明しました。交通刑務所は、一般刑務所と比べて比較的自由度が高い点がありますが、それはあくまで刑務所としての話になります。
を心がけましょう。
やはり刑務所であることには代わりありません。安全第一、気をつけて運転してくださいね。
動画出典:youtube カーナリズムとは関係ありません。
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わたし不思議に思うのは、「過失」に対する刑事罰ってなんなんでしょう。たとえば、アメリカでは人が亡くなってもそれが故意乃至重大な不注意でないかぎり、加害者は刑事訴追されません。解りやすく言うと、夏の暑い日、幼児を車内に何時間も置き去りにして幼児が亡くなったりした場合には、刑事罰の「過失」に問われます。交通事故で不注意のために人が亡くなったとしても加害者が刑事罰に問われることはなく、民事損害賠償の義務を負うだけとなります。
東池袋の踏み間違い事故では、88歳の男性が運転するクルマで31歳の母親そして3歳の幼児が死亡しました。勿論、事故の直接責任は、この男性にあります。この老人は交通刑務所に収監されるでしょう・・・。
しかし、踏み間違いを起こしやすいペダル配置は問題ないのでしょうか? メーカーはペダル配置を変更せずに「自動装置」でこの事故防止を図ろうとしています。これはわたしの推測ですが、メーカーはペダル配置の欠陥がリコールに結び付くのを怖れています。
また、自動装置は機械です。何らかの不具合や誤作動、誤認識発生に際し現在(2019年)では、なんの対処もできないため、運転者が最終責任を取らなければなりません。
すなわち、運転者がアクセルペダルを誤って踏んだのか意図して踏んだのか自動化機械側では判断できないのです。
人工知能搭載がまだ実現していない今、アナログ方式に頼らざるを得ません。
アナログ式のペダル踏み間違い防止装置はたくさんありますよ~。
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