九州産業大学大学院
情報科学研究科
修士論文要旨(平成24年度)

自動変速機装備自動車におけるアクセルペダルの
踏み間違い事故防止に関わる実験的研究

大野一郎
(研究指導教員 合志和晃教授)

自動変速機(オートマチック トランズミッション)が搭載装備された自動車(以下AT車という)が開発された当初から、運転者が意図しないアクセルペダルとブレーキペダルの踏み間違いによる交通事故が発生してきた経緯がある。
本研究はこれら踏み間違いによる事故の防止を図ることを目的として行う。

このような事故が発生する原因は、同方向に操作を行う従来型のアクセルペダル及びブレーキペダルの構造的な欠陥から発生すると考えられ、アクセルペダルとブレーキペダルの操作方法を別にすることが事故防止には効果的であるという仮説を立脚した。
この仮説を検証するために、新型のペダル方式を採用し、シミュレータ(運転模擬装置)によって従来型ペダルと新型ペダル(以下Nペダルという)の操作比較実験を実施した。
その結果、Nペダルにおいては、従来型ペダルと同様に誤操作を行うが、その修正操作の有無において有意性が認められた。

引き続いて、Nペダルを装着した実車と従来型ペダルを装着した実車を使用して同一実験参加者による比較走行実験を行った。
実験中、実験者は実験参加者への外乱として、実験参加者に告知することなく車体を急加速させ、踏み間違いによる事故の模擬再現を行った。
このとき外乱を付与された時の実験参加者の反応について記録、解析を行った。
その結果、実験参加者数44名中有効データと判定された実験参加者数は27名となった。

この実験中、実験者によって付与された外乱後にブレーキを操作するべきところでアクセルを複数回操作したことを踏み間違いによる事故の寄与要因と定義し、27名の実験参加者のペダル操作について詳細に検討を行った。
その結果、従来型ペダルでは、外乱付与後にアクセルペダルの複数回操作を行った実験参加者は合計5名であった。
同様の検討をNペダルでも実施した結果、外乱付与後のアクセルペダルの複数回操作を行った実験参加者はいなかった。

これらの実験結果から、Nペダルにおいては、運転者が自分で何のペダルを操作しているのか容易にかつ明瞭に認識することができるため、ペダル踏み間違いを発端とするアクセルペダルの継続操作による事故に至る可能性が少ないと考えられた。