テスラS3自動運転死亡事故と自動運転に対する米国消費者(コンシューマーリポート)の3つの視点

22 8月 2016

そもそも自動装置とはオペレーターの労働負荷を少なくする目的で作られました。勿論、人間の過失=ヒューマンエラーを取り除いて運航(行)の安全により寄与できることも大きな目的のひとつでもあります。フランスの笑い話で、自動化が進んだ将来の航空機コクピットは人間1人と犬1匹になるというものがあります。「落ち」は人間が操縦装置に触ろうとしたら犬が噛みつくというものです。2016年5月に米国ペンシルベニア州で発生したテスラS3の自動運転中の『死亡事故』を受けて、米国のコンシューマー(消費者)団体が2016年7月14日に発表した『自動化への視点』についての3つのコメントです。(出典元:コンシューマーリポート Consumer Reports 非営利消費者組織であるコンシューマーズ・ユニオン(Consumers Union)が1936年から発行しているアメリカ合衆国月刊誌

視点1:自動運転の絶対的な安全性能が達成できるまで、実用化されるべきではないとしています。車はPCではないので、後日バージョンアップするというやり方は許されないと断言しています。これは、昨今IT系の企業が自動車産業の自動運転分野に参入してきていますが、自動車とITの一番の違いは、車には「人間の命がかかっている」ということです。「バグがあったので事故になりました」では済まされません。ちなみに同じように人の命がかかっている航空機の世界での『自動化』対するインティグリティ(信頼性)やredundancy リダンダンシー(冗長性)に課する担保は1億分の1の不具合発生確率です。

視点2:テスラの自動運転についてのPR方針についてですが、「運転の責任はドライバー」としていながらも「退屈な運転から解放されます」とする自動運転に対するテスラの製造ポリシーを強く批判をしています。そもそも「運転の責任はドライバー、安全運転への注意を怠ることは許されません」というのであれば、自動運転の存在価値そのものがなくなってしまいます。それで、安全運転への注意を反転させて「退屈な運転から解放されます」を逆に強調したのではないかと思えますが、誇大広告表現と捉えられる可能性が大きいといわざるを得ません。

視点3:ドライバーが、自動運転のスイッチを入れて一度運転への集中から意識が離れた後、再び、集中するまでのインターバルについての記載です。自分でも経験がありますが、走行中に車内の会話などで周辺への集中が散漫になった場合、再び、集中し周辺情報が頭で再整理され判断ができるまで若干の時間を要します。それについて「コンシューマー・レポート」の考えでは(筆者註:根拠とする実験等が明確に担保されていません。つまりあまり信用できない数字です)、3秒から17秒としています。今後、レベル2からレベル3(レベル4が完全自動運転です)までの自動運転等の技術が一般化する中で、「手は、常にハンドルの上」がルールとなると考えられます。それはいつでも、ドライバーが運転を引き継げる(自動運転から)状態でなければならないという意味からのものです。しかし、引き継いだ時が、逼迫する危険な状況であれば、とっさの情報処理、判断を生理的に、物理的にドライバーが行うことは到底無理であり、結果、重大な事故につながる可能性があることを述べています。ーーーわたしの経験から例えば、自動着陸の場合を除き(着陸のときなので不具合に対しては即時のオーバーライドを求められます)、巡航ルートでオートパイロットに接続した場合、仮に何かの不具合の兆候があったとき、パイロットはすぐにオートパイロットの接続を解除せずに、何があったのか見極めようとします。結果、オーバーライドするタイミングを逸するというもので、所謂オーバーリライアンス(過剰信頼)と呼ばれるものです。少しでも楽をしようとする人間の業です。ベテランのパイロット程、飛行機の操縦に自信を持っているので、すぐバチッとオートパイロットのスイッチを切ります。若手のパイロット程、飛行機の操縦に自信がないので、オートパイロットをいじくりまわして対処しようとします。一言で『自動装置』を言い表せば、『オートパイロットは、人が簡単にできることは良くできて、人が難しいことはオートパイロットも難しい』ということです。一体なんのための自動装置なのでしょうか?(出典元:Responce【土井正己のMove the World】テスラの死亡事故で我々が学ぶべき「3つの視点」から)

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テスラS3

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テスラエンブレム

 

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テスラ自動運転イメージ

 

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