何故運転者は事故に至るまでアクセルを踏み続けるのかということについて、英国ポーツマス大学の心理学者であるジョンリーチ博士が以下のような仮説を発表した。:

運転者がペダルの踏み間違いを起因として車体が突然の加速状態になり、障害物に衝突するまでフルスロットルで加速し続けるのは、パニック状態に陥ったためではない。

それは、現在進行中の支配的な行動(この場合はブレーキと思ってアクセルを踏み続ける行動)を制御することができないためと考えられる。
つまり、減速するつもりが全く逆の突然の加速に驚愕するような大きな脅威やストレス下において、ひとつの行動から他の行動に移行する際、最初の行動が支配的となって次の行動に移行することを妨げるためと考えられる(例えば、ブレーキに踏み変えられず継続してアクセルを踏み続けてしまうという行動)。

このような行動を制御するのは脳の前頭前野皮質という部分だが、この部分はストレスや脅威を受けると機能不全(障害)を起こしやすい部分である。
別の言い方をすれば、最初の行動が正しいものであればあるほど(自分ではブレーキを踏んだつもりのため=正しい行動)次の行動に移行することにまま失敗することがあり、また、環境状態が変わることによって、行動自体が正しいものではなくなることもある。(この部分の具体例として、例えば、アメリカ人が日本に来て、日常、車に乗り込もうとして何気なく左側のドアを開けてしまうようなことや、左側通行なのに右折の際、右側の車線に入ってしまうこと等が挙げられる);
いわば、人間は一旦正しいと認識したことの「型」から抜け出ることが容易ではなく、却ってその行動を続けてしまうこと)このようなことを“Cognitive rut(コグニティブ・ラット:誤認識の轍)”と表現する。

留意しなければならない点は、「脳」は人間の行動処理機能を司る機関であり、その意味でエンジニアリングや物理の法則に則って作動する他の機械と同じように作動するということである。
簡単に言えば、「脳」は、多機能であるが、しかし限界がある信号処理機能であるということもできる。