ごあいさつ

大野一郎

わたしはHMI(Human=Machine Interfaces)の研究をしています。
簡単にいえば、機械とそれを操作するオペレーターが事故なく安全に運転するためにはどうしたらよいかの方法について考える研究です。

現在は、この中から「ペダル踏み間違いによる交通事故」防止の研究を行っています。
これらの事故とは立体駐車場から転落したり、コンビニエンスストアに突入したりする事故のことです。

このような「ペダル踏み間違いによる交通事故」が発生するのは、ほぼ自動変速機付(Automatic Transmission)の自動車(以後AT車)に発生しています。手動変速機付の自動車では、ペダルの「踏み間違い」が報告されていますが、事故に至った例は未だありません。

このタイプの事故は、ペダルの踏み間違いが発生した後、例外なくアクセルペダルを床まで踏みこみ、障害物に衝突してやっと停止するか、あるいは、ギアをバックに入れ直してまたバックで暴走するというものです。

わたしはこの事故を3つのステージに別けて考えています。

<第1ステージ>

この事故が発生する直接のきっかけは、ペダルの踏み間違いですが、もっと突き詰めて言えば、『ペダル踏み換え忘れ』ではないかと考えています。この事故の98%は特段緊張する場面ではないところで発生しており、停止乃至は減速するためにアクセルから足を踏み換えてブレーキを踏むところで発生しています(米国ノースカロライナ州警察データベース2012年より)。

<第2ステージ>

ブレーキを踏む強さでアクセルを踏めば、クルマは必然的に予期しない突然の急加速に入ります。こうなると人間は死の恐怖を感じ多大なストレスを受けます。クルマの運転を司る脳の部分は、前頭葉の中にある前頭前野皮質という部分で実施しており、この部分はストレスに極めて脆弱で、すぐ機能不全を起こします。

<第3ステージ>

一旦、前頭前野皮質が機能不全を引き起こすと、人間の生理的反射運動(英ポーツマス大学ジョンリーチ博士)として『機能不全を引き起こす直前の行動を継続する』ようになります。すなわち急加速の身体的なのけ反り現象も加わってアクセルをさらに強く踏み続けることになります。

そこで、このような交通事故を防止するためには、アクセルとブレーキを操作する際に『ペダル踏み換えを必要としない』構造にすることがこの種の事故を防止する最も有効な手段であるとの結論に達しました。

この考え方から生まれたシステムが、:
➊大野式手動スロットル/ブレーキ装置
➋大野式左足ブレーキ装置
➌ナンキ工業Stopペダル
➍鳴瀬機材工業 ナルセペダル(ワンペダル)
の各種装置です。

このうち➊大野式手動スロットル/ブレーキ装置及び➋大野式左足ブレーキ装置についてはその操作性について九州大学統合新領域学府オートモーティブ専攻学科(通称自動車大学院)にて検証を進めています。