ゴーン逮捕の背景

29 11月 2018

もと財務省高級官僚で嘉悦大学教授の高橋洋一さん。

DIAMOND online

ゴーン逮捕に見える複雑な力学、日産・経産省・米国の思惑とは

背景に3つの力学が働いた
「反ゴーン」派と経産省の思惑は一致

「反ゴーン」派と経産省の思惑は一致 つまり、事件は(1)日産社内の対立、(2)経産省の意向、(3)アメリカ政府の意向が反映した複合的な結果だと、思われる。

こうしたことををいうと、陰謀論かといわれそうだが、少なくとも有価証券報告書の虚偽記載はあったと考えていいし、何らかの立件が行われるはずだ。

だから、その背景を論じても犯罪をでっちあげたということにはならないだろう。その意味では、陰謀論ではない。

そこで、事件の背景だが、社内対立があったのは間違いないと思われる。

というのは、事件は内部通報、つまり“たれ込み”から発覚しているからだ。内部通報を社内で検討した結果だから、社内対立を否定する材料はない。

これは、11月19日のゴーン氏逮捕の直後に行われた西川社長の会見:

動画出典:Youtube

内部通報を受けてから数ヵ月もゴーン氏とケリー氏の内部調査し、同時に検察当局への報告もしていたという。 ゴーン氏は仏ルノーのトップでもある。ルノー社はもともとフランス政府が筆頭株主になっている国有企業だ。現大統領のマクロン氏は、経済・産業大臣の時に、フランス政府とルノー社の距離を縮めた功績がある。

ゴーン氏は当初、フランス政府と距離を置いていたが、今年2月に、ルノーの会長任期の更新の時期に、かなり政府との関係が近くなったとされる。

ゴーン氏が会長を引き続いてやるもとで、ルノーが日産を「統合」し完全子会社化するという構想が動き出したとも報じられている。

この情報は当然、日産社内でも知られているだろう。

そこで、日産社内の反ゴーン派は、フランス政府との対抗するために、日本政府のサポートを得たかっただろう。

そこで、経産省の意向がでてくる。

日産は今年6月に社外取締役として経産官僚OBを入れた。 実はゴーン体制以前の日産は経産官僚の天下り先だった。それが絶えて久しかったが、6月に再び受け入れた。

しかも、元経産審議官という経産省の事務方でナンバー2だった人物だ。

これで、今回の情報は、経産人脈のルートで経産省や官邸に流れ、いざというときの「保険」として日本政府が出てくる用意が整ったということだろう。

経産省内でも、ルノーの事実上の支配下にある日産が、三菱自動車を傘下に置いているので、ルノーが、日本メーカーの日産と三菱を支配下に置くのは好ましくないと考える官僚もいた。

だから、経産省も日産がOBを受け入れるのは、歓迎だっただろう。

日産が経産OBを受け入れた今年の6月は、ちょうどゴーン氏の社内調査が着手された時期と重なる。このタイミングは微妙なところだ。

ルノーの対中協力で
米政府、技術流出を警戒

さらに筆者が影を落としていると考えるのは アメリカ政府の意向だ。

米トランプ政権と仏マクロン政権はうまくいっていない。米トランプ政権は、対中貿易戦争の真っ只中だ。

もっとも対中貿易戦争を仕掛けたトランプ政権の狙いは、、貿易不均衡は建前であり、実際は中国への技術流出防止というのが本音だ。

そこに、ルノーの対中技術協力の話が進行中だった。

ルノーの傘下には、日産と三菱自動車がいる。日本の電気自動車でのエネルギー関連の技術は軍事転用可能なので、アメリカも神経質になっている。

9月26日に行われた日米首脳会談では、中国こそ名指しはしないものの、「知的財産の収奪、強制的技術移転」に対処すると、共同声明に書かれている。

000402972(日米共同声明)

日本としても、ルノー経由での中国への技術流出を避ける必要があったはずだ。

こうした複合的な背景が、今回のゴーン事件の背後にあると筆者はにらんでいる。

といっても、これらはあくまで背景であり、検察の捜査は、ゴーン氏の有価証券報告書の虚偽記載を中心にして、法の正義による一定の司法手続きが進行していくだけだ。

そのことでは表向き、日仏両政府は静観せざるを得ない。

(嘉悦大学教授 高橋洋一)

画像出典:Wikipedia

 

 

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