自動ブレーキ装備の義務化? 愚策です。

30 11月 2019

「自動ブレーキ」というのは電子的(カメラ、赤外線レーザー、ミリ波レーダー等)な装置を使用する自動化装置です。ただし、自動ブレーキ搭載車のカタログにも記載がある通り:なにか不都合があって「事故等」になった場合の最終責任は「運転者」にあることになっています。

ということは、次のことを意味します:「運転中、運転者が何か主要な運転装置を操作した場合、「自動装置」は解除になる」ということです。

とすると:

➀「自動ブレーキ」は運転者が何もしないときに効果があるということになります。例えばですが:

高速で居眠りをしてしまい渋滞最後尾に衝突するなどの場合。運転者は寝ているので効果が認められます。また、運転者がよそ見をしている場合などにも有効であると思われます。

➁「自動ブレーキ」のセンサーに不具合がないことが大前提です:

自動ブレーキ(損害軽減ブレーキ)のセンサーは、中高速からの効果が期待されているので、大抵は「ミリ波レーダー(100m~200m)」かあるいは「カメラ(可視範囲)」です。この2つはそれぞれセンシング・レンジ(探査距離)が長いのですが、それぞれ短所もあります。

例えばカメラ(単眼・複眼):人間の目とほぼ同じなので夕暮れ時などは探知しにくいなどの欠点があります。以下自動ブレーキでの事故 千葉日報 2017年4月14日 18:51からの記事です:

自動ブレーキ作動せず事故 日産販売店長ら書類送検 千葉県警、全国初

千葉日報オンライン
2017年4月14日 18:51 | 無料公開
https://www.chibanippo.co.jp/news/national/401244

運転支援機能を搭載した日産のミニバン「セレナ」を試乗した客にブレーキを踏まないよう指示して事故を起こしたとして、県警交通捜査課と八千代署は14日、八千代市内の日産自動車販売店の店長男性(46)と同店の営業社員男性(28)を業務上過失傷害容疑で、試乗した客のトラック運転手男性(38)を自動車運転処罰法違反(過失傷害)の疑いで、千葉地検に書類送検した。運転支援機能付き車両の公道での試乗事故は全国初。

書類送検容疑は、営業社員男性は昨年11月27日午後4時50分ごろ、セレナの試乗に来たトラック運転手男性の助手席に同乗。店舗近くの八千代市大和田新田の市道で、アクセルやブレーキ、車線保持などの運転を支援するクルーズコントロール機能が危険を検知して自動停止すると誤った認識のまま、運転手男性に「本来はここでブレーキですが、踏むのを我慢してください」と指示。男性はブレーキを踏まず、信号待ちしていた乗用車に衝突。乗っていた30代の夫婦に全治2週間のけがを負わせた疑い。

同社ホームページによると、セレナは、高速道路での運転を支援する「同一車線自動運転技術」と危険を察知して自動でブレーキがかかる「エマージェンシーブレーキ」を搭載。交通捜査課によると、本来は車両の単眼カメラで危険を察知して自動ブレーキがかかるが、事故当時は夜間で雨が降っており、追突された車は黒色だった。セレナに故障や異常はなく、同課では「対向車の前照灯など道路環境や天候が重なり、自動ブレーキが作動しないまま追突した」と結論づけた。

3人はいずれも容疑を認めている。営業社員男性は「過去数回、試乗時に運転支援機能のクルーズコントロールを設定していたところ停止したので、試乗時も停止するものと誤認したまま指示した」と話している。営業社員男性は試乗中、クルーズコントロール機能を作動させ「時速40キロの設定速度で進行すると停止車両を検知し自動停止する」と説明していたという。同課によると、同社のマニュアルでは、夜間・降雨時の試乗、一般道でのクルーズコントロール機能の使用を禁じていた。同課では「自動運転機能は、あくまでも支援システムで限界がある。運転者が機能を理解すべき。警鐘を鳴らすため立件した」と話している。(以上千葉日報記事)

このシステムでは、システムの閾値がはっきりと示されていません。すなわち、システムがちゃんと作動するのかしないのか運転者には示されないということになります。カメラの方にしてみれば、見えなかったのだから仕方がないということになりますよね。

「同社のマニュアルでは、夜間・降雨時の試乗、一般道でのクルーズコントロール機能の使用を禁じていた」ということですが、それが自動装置? まだ未熟ですね。

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ミリ波レーダー(周波数:30GHz(ギガヘルツ)から300GHz、波長:1ミリメートルから1センチメートルまでの電波)は、約100m~200mの探知範囲です。高速道路での使用を主に想定しています。しかし、ミリ波のレーダー照射を行うため、豪雨(80mm以上/時間)では雨滴にレーダー波が乱反射して障害物がうまく検知できないという欠点があります。また、レーダー波を照射する部分に泥などが付着すると当然機能不全となります。

さて、➀「自動ブレーキ」は運転者が何もしないときに効果があるということになります。

次に「ペダル踏み間違い事故」を考えてみます。この事故の大きな特徴は:

ペダル踏み間違いに引き続いて運転者は、アクセルペダルを踏み続けて事故に至るというものです。とすると、「主要運転装置への運転者操作があれば、自動装置は解除される」ために、自動ブレーキは全く効果がありませんね。つまり2019年現在のシステムでは、運転者がアクセルを故意に踏んだのか誤って踏んだのか判断できないためです。

ペダル踏み間違い事故対応として「加速抑制装置」が開発されています。しかし、この装置の作動条件は:停止から時速約20kmとなっており、自動化装置の大原則(人間の操作を優先)ということに反しています。

その上で、自動ブレーキを「義務」づけるという国土交通省に関する記事をお読みください:

自動ブレーキ、新型車で義務化 21年度にも 政府方針

11/27(水) 2019年 0:00配信
朝日新聞デジタル
https://www.asahi.com/articles/ASMCV5Q3FMCVUTIL03J.html

自動ブレーキ、新型車で義務化 21年度にも 政府方針
義務付けられる自動ブレーキの性能

政府は、国内で販売される新車に衝突被害軽減ブレーキ(自動ブレーキ)の取り付けを義務づける方針を固めた。歩行者に反応する自動ブレーキなど、国際基準を満たす性能を求める。新型の乗用車は早ければ2021年度から、既存の車種はその数年後から義務づける方向で調整している。

(大野註:新車は再来年、既存車両は2025年くらいからとなりますが、何千万台もあるクルマにそれを装備する必要があるのでしょうか? 朝日新聞本当ですか? わたしはあり得ないと思います)

高齢ドライバーによる事故が相次ぐなか、政府は6月の緊急対策で、自動ブレーキの基準づくりと新車への義務づけについて、年内にも結論を出す方針を示していた。国土交通省が定める告示を改め、新たな基準を書き込む予定だ。義務化で安全性が増す一方、メーカーの開発状況によっては販売価格が上がる可能性もある。

義務づけの対象になるのは、乗用車や軽自動車、軽トラックなど。乗用車以外についてもこれから時期を調整する。大型トラックやバスは14年以降、自動ブレーキの取り付けが順次義務づけられている。

自動ブレーキの性能については、6月に国連の専門部会で国際的な基準が決まった。

この基準では(1)時速40キロで走行中、前に停車している車にぶつからずに止まる(2)60キロで走っていて、前を20キロで走る車にぶつからない(3)30キロで走行中、時速5キロで前を横切る歩行者にぶつからずに止まる、という三つの条件を備えることが求められる。

国内でも、昨年3月に始まった自動ブレーキの性能認定制度がある。ただ、前方の車両に対する自動ブレーキ性能だけを定めたもので、▽時速50キロで走っている時に前方で停止している車にぶつからない、またはぶつかるときに20キロ以下になっている▽50キロで走っていても前方を20キロで走っている車にぶつからないといった国際基準よりも緩い内容だった。

朝日新聞社

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また、自動ブレーキの不具合について、次の動画もあります:

動画出典:youtube

何故行政も世間もマスコミもみなさんこぞって「自動」にこだわり続けるのでしょうか??

カタログの最後に事故ったらそれは運転者の責任ですと小さく印刷してあったら、それは、運転者がアナログで操作したほうがいいですよという意味です。

わたしが開発した「左足ブレーキ装置」をお勧めします:

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