「力積」という言葉があります。高校物理用語です。力積=I (アイ Impulse)
質量m の質点を考えると、時刻tA, tB(時間は{\displaystyle t_{A}\to t_{B}}と進む)におけるその質点の運動量の変化と質点に働く力の関係は、
- {\displaystyle {\boldsymbol {I}}=m{\boldsymbol {v}}_{B}-m{\boldsymbol {v}}_{A}=\int _{t_{A}}^{t_{B}}{\boldsymbol {F}}dt}
である。ここで、I を力積と言う。vAは時刻tAでの質点の速度、vBは時刻tBでの質点の速度、F は質点に働く力である。したがって速度v に対する質点の運動量はmvとなる。 これは運動方程式、
- {\displaystyle m{d{\boldsymbol {v}} \over {dt}}={d(m{\boldsymbol {v}}) \over {dt}}={\boldsymbol {F}}}
において、左右両辺を時間({\displaystyle t_{A}\to t_{B}})について定積分すると最初の式が導かれる。
要するに衝突した部分にかかる力です。
何が何だかわたしの錆びついた頭では理解に苦しみますが:
交通事故では「物と物との衝突、あるいはものと人との衝突」が発生します。すなわち、乗用車では1t前後の質量を持った物体がある速度で衝突すると F (Force)が発生します。
作用店にかかる力は理解しましたが、それでは人体にいったいどのくらいの力が作用するのでしょうか? それを測るために
G (重力加速度) という概念があります。これを使えば、人体にどのくらいの力が作用したのか推し量ることができます:
G とは? :
のHPから(2019.12.17):
「G値ってなに?」加速度と重力加速度を理解してみよう
加速度の単位のG
標準重力加速度を基準とした、加速度の単位で「G」というものがあります。この場合は、重力加速度の単位のgとは違い、大文字でGと書かれます。少しややこしいですが、以下のように覚えてください。
1.0 G = 9.80665 m/s²
1Gとはいったいどのようなものかというと、「私たちが地球からうけている重力と同じだけの加速度がかかっている」と考えていいでしょう。それに対して、0Gは加速度が全くかかっていない状態です。
POINT
- 「G」とは加速度の単位です
- 1.0 G = 9.80665 m/s²
私たちが体感する加速度のGはどれ位?
加速度のGの例をあげてみます。エレベーターに乗ったときに上がるときに体が重く感じたり、一方で下がるときにフワッと軽くなる感覚を経験したことはありませんか?エレベーターでは、上下方向に最大で+0.2Gと-0.2Gの加速度を感じるといいます。それは、体重が100㎏の人が、自らの体重を120㎏に感じたり、80㎏に感じるのと同じくらいの値だと言えます。
0.2Gでも、結構体感できることがわかったかと思います。では、1Gの加速度とはどれくらいかというと、実は、一般の車ではなかなか出すことが難しい値です。
しかし、スポーツカーであれば体感することができます。スポーツカーが急発進して、時速100kmに達するまでに、なんと3秒しかかかりません。そのときに感じるGが1Gにほぼ近いものといえます。
正面衝突の加速度の計算
では、スポーツカーの例に戻って、急に止まった場合はどうでしょうか?例えば時速100㎞/hで走っているスポーツカーが、2秒で急停止した場合、ドライバーにどれ位のGがかかるのでしょうか?
計算してみましょう。
まずは、時速を秒速に直します。(これは同じです)
(計算式:100㎞/h×1,000÷3,600s=27.78ⅿ/s)
加速度= 27.78ⅿ/s÷ 2秒 = 13.89ⅿ/s²
13.89÷(9.81m/s²)
=1.42(G)
速度の変位量が変わっていないのに、止まるまでの時間が3秒から2秒に縮まったことで、加速度のGはおよそ1.4倍くらいアップしましたね。
速度の変位量が変わっていないのに、止まるまでの時間が3秒から2秒に縮まったことで、加速度のGはおよそ1.4倍くらいアップしましたね。
ここで分かることは、スピードの変位量が大きく、それが短時間であればあるほど加速度(G値)は大きくなるのです。簡単にいうと、急発進であればあるほど、G値が大きくなる。急停止であればあるほど、G値が大きくなる。ということです。当たり前ですよね。
では、正面衝突事故が起きたらどうでしょうか?先ほどと同じように時速100㎞/hのスポーツカーが、0.05秒で停止したら……
加速度=27.78m/s÷0.05秒=555.6m/s²
G値=555.6÷(9.81m/s²)= 56.6(G) です。
つまり、ドライバーの体重が70㎏なら、なにもしない状態で重力(1G)がかかっていますから、この56.6倍の重力がかかるわけです。つまり
70㎏×56.6G = 3,962㎏の負荷を体に受けたことになります。3,962㎏とは約4t。
4t!!
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前回の投稿では、一部高速道路の制限速度が100km/h ➡ 120km/h になるというお話しでした。上記のように計算してみます:
120km/h ✖ 1000 ÷ 3600秒 = 33.33 m/s
33.33 m/s ÷ 0.05秒 =666.6 m/s² (0.05秒で急停止した場合)
666.6 m/s² ÷ 9.81m/s² =67.95 G
ドライバー体重70kg 70kg ✖ 67.95G ≒ 4756kg
4.7t の Gがかります。 20km/h増加で 0.7t 増加です。
僅か20km/h速度を増加して得られるものは、危険度の増加だけです。
さて、次は
からの回答例です:
自動車55km/hフルラップ衝突(強固な壁面に正面衝突する場合)で40~50G。エンジンルームが破損することで衝撃を吸収するため、一応死なないような加速度に収まるよう設計されている。 自動車事故で重傷に収まる(死なない)限度は150G/0.1秒~200G/0.1秒程度なので、単純計算で100km/hが救命可能限度。
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さて、次は、今から20年前の交通事故、加害者の反省文です。少し長いですが、様々な人の交通事故によって変わった人生模様が詳しくつづられています:
アクセルの踏み間違い、それとも車の異常? 池袋暴走事故裁判から、筆者が思い返す24年前のある死傷事故
柳原三佳 ノンフィクション作家・ジャーナリスト 2020年10月16日
昨年4月、東京・池袋で発生した母子死亡9人負傷の暴走事故。1年半経ってようやく開かれた初公判(10月8日)の模様がニュースで流れると、被告人に対する世間からのバッシングがいっせいに始まりました。
その理由は、この事故を起こし、自動車運転処罰法違反(過失致死傷)に問われている旧通産省工業技術院の元院長・飯塚幸三被告(89)が、全面的に無罪を争う姿勢を示したことにありました。
報道によると、飯塚被告は「アクセルを踏み続けた記憶はない」と起訴事実を否認。暴走事故の原因について、「車の走行制御システムに異常が生じた」と主張し、自身の運転ミスではないと述べた、とのことです。
被告が主張する「走行制御システムの異常」とは、該当車種にみられる欠陥なのか?
それとも、点検・整備の際の不手際だったのか?
ぜひ裁判の中で徹底的に立証し、明らかにしていただきたいと思います。
■ある死亡事故の「加害者」から届いた手紙
池袋暴走事故の初公判のニュースを見たとき、私はふと、過去に取材したある死亡事故のことを思い返していました。
その事故の「加害者」から初めて分厚い封書が送られてきたのは、今から22年前のことでした。
中には、「禁固1年6月執行猶予4年」と書かれた自身への判決文と、震えるような手書きの文字とワープロで綴られた、以下のような長文の手紙が同封されていました。
私の起こした事故によって、意識不明のままお亡くなりになった歩行者のA様、そして、お身体だけでなく、精神的にも大きなショックを与えてしまった軽自動車のB様とC様、誠に申し訳ありません。
また、被害者のご親族様、お勤め先の会社の方々には、多大なご心配とご迷惑をおかけして、誠に申し訳ございません。
事故から10日後、静岡でA様のご葬儀が行なわれ、私たちは夫婦で参列させていただきました。A様、どうか御成仏なさってください。
現場で新築中だった家主様、大工の方にもご迷惑をおかけしまして申し訳ありません。事故処理をしてくださった消防署、警察署、救急病院の皆様、本当にお世話になりました。
そして、私が勤務していたタクシー会社、その他多くの方々にご迷惑とご心配をおかけしました。
せめてもの救いは、A様の奥様とご親戚の方に「不慮の事故と思い、おたくも早く立ち直ってください」と言われたことでした。
加害者の私に、なんと優しく……、と思いました。
一瞬にして3人を死傷させ、自らも頚髄損傷で重度障害を負うというこの不運な事故は、1996年5月9日午後9時35分頃、熊本県菊池郡のT字路で発生しました。
当時、タクシーの運転手をしていたOさん(当時46)は、この夜、乗客を目的地まで送り届け、いつものルートで会社に戻るつもりでした。
ところがその帰路、急な下り坂を走行中、思わぬ事態が発生しました。
前の信号が赤にもかかわらず、車を停止させることができず、速度が出たまま交差点に進入し、次の瞬間、T字路の右側から走行してきた軽自動車の左側面にまともに衝突してしまったのです。
「常識では考えられない体験でした。私は下り坂に差し掛かったとき、いつものようにセカンドギアに入れ、エンジンブレーキとフットブレーキを使いながら停止線で止まるつもりでした。ところがそのとき、一瞬、ブレーキペダルから足を滑らせてしまいました。私はすぐにブレーキペダルを2度、力いっぱい踏みました。
(大野意見:エンジン停止が起こって、ブレーキダイアフラムーブレーキ倍力装置ーが効かなくなることも考えられますが、加速したのは坂道だけのことだけではなく、アクセルを踏んでいた可能性も考えられます。また、何故ブレーキペダルを2度踏んだのか?? 1度だけでは効かなかったので踏み換えしたと考えられます。アクセルを踏んでいた可能性が非常に大きいです。 この点東池袋の事故は、イベントデータレコーダーを搭載していたので、アクセルを踏んでいたことが明白に記録されています)
しかし、瞬時にスーッと抵抗力がなくなり、下りで加速したまま交差点内に進入してしまったのです。その直後、『ドドーン』『バッシャーン』『ガッシャーン』と3度のショックを受け、首に激痛が走りました」
タクシー常務歴16年。長年、無事故で安全運転を続けてきたOさんにとっては、信じられない出来事でした。
Oさんのタクシーが衝突した軽自動車は、そのはずみで一回転しながらすぐ近くを歩いていた歩行者の男性(当時57)をはね、道路沿いの会社の事務所の塀にぶつかって停止。
Oさんのタクシーはそのまま前方の用水路を乗り越えるように路外に突っ込み、新築中だった住宅の一部を壊して停止したのです。
画像出典:Wikipedia 柳原三佳氏
この事故で、軽自動車に乗っていた20代の女性2名は頚椎損傷などのけがを負い、意識不明で救急搬送された歩行者の男性は、1週間後、亡くなりました。
運転席に閉じ込められたOさんは、すぐに無線を使ってタクシー会社に事故の知らせを入れましたが、その後は意識が朦朧とし、救急車が到着するまで動くことができませんでした。
■10日前にも同型車が踏切で死亡事故。原因はエンストによるブレーキロックか?
実は、Oさんの事故のわずか10日前には、同じ会社の同型のタクシーが、警報機の鳴っている踏切に突っ込んで列車と衝突し、運転手も乗客も即死するという大事故が起こったばかりでした。
踏切で事故を起こしたタクシーとOさんのタクシーは、いずれも数か月前に納車されたばかりの新車だったのですが、Oさんは同僚の事故が起こったときから不安を感じていたと言います。
「私が乗るタクシーの新車はこれで5台目だったのですが、とにかく今回のトヨタ・コンフォート2000cc(マニュアル・LPG車)のように、走行中にたびたびエンストする車は初めてでした。事故の原因について自分なりに何度も考えたのですが、おそらくエンストをして、その後にブレーキロックを発したことによって、瞬時に真空エアを使い切ってしまったのではないかと思うのです。つまり、停止したくてもブレーキが利かないということです」
実際に、Oさん自身も、納車後からわずか2ヶ月の間に4回ものエンストがあったので、ディーラーで2度、ガス調整をしてもらっていました。
踏切で亡くなった同僚も、同じく事故前に数回のエンストトラブルを起こし、同じディーラーに見てもらっていたというのです。
「電子制御された車のメカニズムについてはよくわかりませんが、エンストするとブレーキが効きにくくなるから怖いなあ、という思いで乗っていたのは事実でした。結果的に5回目のエンストが、今回の大事故につながったのです……」
■「シラを切り通していたら、亡くなった方が浮かばれん!」
しかし、警察は、Oさんのこの主張を受け入れようとはしませんでした。
「警察は最初から、私の全面的な過失で起こった事故だと決めつけて処理したかったようです。私がエンストの話をしようとすると、『お前の責任逃れの弁明など聞けん!』と何度も怒鳴られました」
しばらくして、九州陸運局熊本陸運支局から戻ってきた「鑑定書」には、
と記されていました。
しかし、「装置の異常」の有無について簡単に回答してきただけのこの鑑定書に、Oさんは疑問を感じたと言います。
「私が説明したのは、ブレーキの『装置』の異常ではありませんでした。走行中に起こった『エンスト』がブレーキの効きを悪くした原因ではないかと訴えていたのです。でも、もう一度エンストのことを話そうとすると、担当警察官は、『そんなに言うなら、トヨタを相手に裁判でもおこすか?』『過失を認めないなら、交通刑務所に入れてやろうか?』と強い言葉で詰め寄ってこられたのです」(Oさん)
そして、取り調べ2日目、Oさんは警察官から浴びせられた一言によって、反論する気力を失いました。
「『事故は現実に起きているんだ。いつまでもシラをきりとおしていたら、亡くなった方が浮かばれんぞ!』 そう言われたときには、そうだ、Aさんはお亡くなりになったのだ……、という思いが込み上げ、思わず返す言葉がありませんでした」
そのとき取られた「供述調書」には、以下のように記録されていました。
<この事故は、私が三叉路交差点でぼんやりしていて、停止線に気づくのが遅れたため、あわててブレーキを踏もうとしたところ、ブレーキとアクセルを踏み違え、アクセルペダルを踏んだことに間違いありません>
この調書は熊本地検に送致されました。
そして、Oさんは「業務上過失傷害罪」(当時)で起訴。
事故から1年後、有罪判決を受けたのです。
■警察も検察も、裁判官も、誰も耳を傾けてはくれなかった
下半身の麻痺のほか、手足の震え、痺れ、言語障害等の重い障害が残り、車の運転ができなくなったOさんは、運転手という仕事を失いました。
しかし、加害者の立場であるOさんには十分な保険金は下りず、生活はたちまち困窮します。
その後、離婚。妻は2人の娘を連れて家を出ました。
私が熊本のご自宅に初めてお邪魔したときは、事故から6年が経過しており、Oさんはひと月5万円の障害者年金を受給し、デイサービスを受けながら一人暮らしをしておられました。
すでに4年の執行猶予期間も過ぎていましたが、それでもOさんは割り切れない思いを抱き続けておられたのです。
実はその後、私がOさんの事故について雑誌で記事にしたところ、メーカーやディーラーの関係者からかなり詳細な情報が複数寄せられました。
それは、『Oさんが乗っていたコンフォートという車種は、走行中のエンストが後を絶たなかった』という内容です。
実際に『自動車工学』(1997年10月号)という雑誌には、『低すぎるアイドル回転』という見出しの記事が掲載され、トヨタ・コンフォート(LPガス仕様)のタクシー車で、アイドル回転時にステアリング操作するとエンストするトラブルが多発していることが明記されていました。
まさに、Oさんが事故を起こした時期と重なります。
しかし、今となっては、事故との因果関係を証明する術はありません。
■真の原因究明こそが、再発防止につながる
Oさんはこう語っておられました。
「警察も検察も、裁判官も、誰ひとりとして真剣に私の訴えを聞いてくれませんでした。だからこうして、あのときの出来事を聞いてもらえるだけでも心が救われるんです。今回の事故で、私の人生は立ち直りが効かないほど破壊されてしまいました。でも、私の体験が後の世に理解され、現状の貧困から抜け出すことができたとき、そして、この事故で尊い命を奪われたA様のご仏前に真相の報告ができたとき、残された人生が少しは意味のあるものになるような気がしています」
交通事故は、「人」と「車」と「環境」が複雑に絡み合って起こります。
もし、「車」に不具合があったのなら、それを早く突き止め、改善することで次の事故を防ぐことができるはずです。
もし、「アクセルとブレーキの踏み間違え」が事故の原因なら、なぜ、そのドライバーが踏み間違いをしてしまったのかを徹底的に検証し、万一踏み間違えをしたとき、車の急加速を止める方法を導入するなど、次なる被害者を生まないための対策を行うべきではないでしょうか。
Oさんの事故から24年……。
私の耳には今も、あの辛そうな、切々としたOさんの言葉が染みついています。
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東池袋の母子死亡事故を念頭に置いたであろうハイライトをした文章には、色々な事柄が含まれています:
先ず、所謂『「ペダル踏み間違い」をしてしまったのか徹底的に検証し』とありますが、それは不可能なことです。つまり、「過失」の再現実験をすることは不可能だからです。
しかし、多くのドライバーが「ペダル踏み間違い」をしてしまうのも事実です。
ここから考えられるのは、ペダル設計に不備があるのではないかということです。
間違いができないようにすればいいのです:
画像出典:大野一郎
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