軽井沢スキーバス単独転落事故、大野推定原因

29 8月 2017

直前のブログ(https://ono-fumimachigai.com/traffic-accident/car-crash/6452/ 「アクセル/ブレーキ同時踏み」)で大型車に装備されるエアブレーキについて少し触れましたが、そのときにわたしの脳裏をよぎったのがこのバス事故原因についてでした。公式には(長野県警発表)運転者の運転ミスですが、それでは15名も亡くなった事故の原因発表として十分ではありません。どういう運転ミスだったのか折角調べたのですから大きく発表しなければなりません。公的機関の義務です。

結論からいいます。この事故原因は、エアブレーキの「バタ踏み」です。

画像出典:Wikipedia

大型バス初心者が運転

このバスを運転していたのは、エアブレーキが装備されている大型バスの運転初心者でした。エアブレーキは言葉通り大気(空気)をコンプレッサーで圧縮し、タンクに蓄圧してブレーキに使用するものです。空タンクに圧縮空気を貯めるのには、結構時間かかります(≒2~3分くらい)。このため、碓氷峠のような曲がりくねったワインデングロードで「バタ踏み(またはポンピングブレーキ)」を行うとタンクのエアを使い切って、ブレーキが効かなくなる恐れがあります。以下:

国土交通省は2013年6月28日に、エアブレーキのバタ踏み操作でエアを浪費して制動力が低下したために発生した事故が2件発生したことを受け、エアブレーキの操作に関して注意喚起を行い、同時にいすゞ自動車日野自動車三菱ふそうトラック・バスUDトラックスの大型車メーカー4社に連名で注意喚起を行いました。

この運転手の大型バスの運転技量についてWikipediaの記事から:

バスが行程表と異なるルートを通ったことに関しても、運転手から運行管理者への連絡はなかったという。[62]

運転手のバス運転技量:

運転手の以前の勤務先の関係者は、運転手は小型バスの運転が中心であった為、大型バスの運転には不慣れで、深夜業務の経験も乏しかったとし、イーエスピー幹部(バスの運行会社)も「高速道路だけで、一般道はやらせないようにしていた」と話しています。事故を起こした運転手はイーエスピー入社時に「大型バスの運転は不慣れ」と伝えていたが、2回の研修を経て大型バスの運行業務に就き、この日は4回目の大型バス乗務でした。同社の営業部長は「研修は、同僚が運転する近郊のスキーツアーに同行し、現地に到着後、客を乗せずに周辺の山道などを走らせていた」「会社として決まった研修ルールやチェック項目はなく、技量の確認は同乗のドライバー任せだった」と説明しました。通常、路線バスの乗務員研修は経験者でも最低3ヶ月を要します。TBSワイドショウの「ひるおび」で、事故を起こす前の走行シーンの監視カメラの映像を見た長野交通の運転手は、「慎重すぎるくらいの安全運転」と評しています。

画像出典:Wikipedia

大型・中型バス(主に全長7m以上 ※1)と小型バス(全長7m未満)には以下のような違いがあります。

大型・中型バス 小型バス
フットブレーキ エアブレーキを搭載。ブレーキペダルの踏み込み・ゆるめ操作を短時間に必要以上繰り返すと(俗にいう「バタ踏み」)、コンプレッサーに貯めた空気を消費し、ブレーキ力が失われる場合があり、また貯めるのに相当分の時間がかかる。 液圧式ブレーキを搭載。ブレーキを連続してかけ続けると、ブレーキシリンダー内のフルードが沸騰し気化してブレーキ力が失われる場合がある(ベーパーロック現象)。この為、断続的にブレーキをかける必要がある。エンジンブレーキの利用も有効。
制動距離 ブレーキの特性上、一般的に乗用車より長い。 ブレーキが乗用車と同じため、応答性は高いが、乗車人数(総重量)によっては一気に伸びる。
補助ブレーキ 排気ブレーキが一般的。エンジンブレーキの効果をさらに高める。 排気ブレーキが一般的だが、一部に持たない車種もある(主にガソリンエンジン車)。
シフト 無理に変速できる場合がある。 無理に変速できる場合がある。
内輪差 大きい。 小さい。

(※)かつては乗車定員11名以上の乗合車はすべて「大型車」に分類されていたが、2004年の免許制度変更により、全長9m未満、車両総重量8トン未満の車両は「中型車」に分類され、免許も別々となりました。それ以前は、「大型車」の教習には現在の中型車相当のトラック・バスが使用されており、実質中型車で教習を受けたドライバーが大型車を運転できてしまう事態になっています。当該事故のドライバーも、旧制度時代に大型免許を取得していました。

※特にエアブレーキに関して、構造が全く違う車種で免許を取得していたわけです。行政の欠陥とさえ言ってもよく、この事故の責任者の一端です。

 

事故車の情報:

事故を起こした車両は2002年10月に登録されており、ドライブレコーダーを搭載していませんでした。2002年製の三菱ふそう製「エアロクイーン」です。また、ギアは6段変速の手動のマニュアル車です。ただし、電気的に制御され、運転手が高速ギアから低速ギアにいっぺんに無理に変えようとすると、エンジンの過回転によるエンジン破損を防ぐため操作がキャンセルされ、ニュートラルか元のギアになるようなっています。

※大野意見:この機構には重大な問題が隠されています。それは、当事故のように例えエンジンが壊れても速度を落としたいとき、それができないことです。製造者、設計者の大きな「お世話」です。それができなかったことは、製造者の大きな過失責任があるのではないでしょうか?

画像出典:Wikipedia

事故直前の運転状況:

複数の乗客が「バスは事故の直前、かなりのスピードを出して左右に揺れていた」と証言しています。現場の約250m手前の監視カメラには、事故車とみられるバスが蛇行しながら走る様子が写っていました。また、バスは転落時に片輪が浮いていた可能性もあるとのことです。国土交通省高崎河川国道事務所は、事故車が平均車齢11年を約2年上回っていることから、車両に不具合があった可能性も視野に入れているということです。(大野註:突然ですが)戸崎肇は「車齢13年は標準的」とし、「あの事故現場でスピードを出しすぎる原因は、意識が飛んでいたことくらいしか考えられない。瞬間的な眠気など意識障害に襲われたのではないか」(大野註:戸崎肇さん、経済学者です。なんで交通事故の事故原因まで首を突っ込んでくるのですか?言っていることは、本当に現実離れしています。あの事故現場でスピードをだすことなど考えられないといっていますが、スピードを出したくて出したのではなく出てしまったのです)と推測、右に急ハンドルを切ったことについては「意識が戻って気付いた危険回避行動の可能性が高い」(大野註:ちがいますよ!)とみています。(以上Wikipediaから抜粋)

長野県警の検証の結果、バスのギアがニュートラルになっていたことと、ブレーキ部品に異常がなかったことがわかりました。県警は、ニュートラルのためエンジンブレーキ排気ブレーキなどの補助ブレーキが効かず、フットブレーキだけでは減速しきれなかった可能性があるとみて調べを進めています(大野註:逆です。フットブレーキがダメなので、必死のギア操作をしたのです)。事故車は6段変速のマニュアル車フィンガーシフト式)で、運転手が高速ギアから低速ギアに無理に変えようとすると、エンジンの過回転による破損を防ぐため操作がキャンセルされ、ニュートラルか元のギアになるようプログラムされています。

※大野意見:本事故のように運転者が例えエンジンが壊れても速度を落とすために低速ギアに落とせるようになっていなければいけないと思います。機械の方でそれを阻止するのは欠陥でさえあります。

国交省の関係者は「大型車の運転に不慣れな運転手が急に低速ギアに入れようとして、クルマの設定プログラムによってニュートラルになり、エンジンブレーキで減速できずパニックになった可能性がある」とみています。ただし、事故の衝撃でギアがニュートラルに動いた可能性もあり、長野県警は慎重に調べています。

※大野意見:低速ギアで速度を落とそうとしたのは、フットブレーキが効かなくなったからだと思われます。事故の寄与要因を明確にしなければなりません。

推定事故原因

推定事故原因(大野):運転者はエアブレーキを装備しない小型バスの経験しかなく、エアブレーキを装備する大型バスは研修を含み4回だけでありました。会社は、高速道路のみの運転に限定していましたが、何らかの理由で一般道路を運転せざるを得なくなりました。そして国道18号碓氷峠(ワインディングロード)でフットブレーキのバタ踏みを行い、効かなくなって低速ギアに入れようとしましたが、弾かれてニュートラルになった結果、エンジンブレーキや排気ブレーキも効かず、結局カーブを曲がり切れずに転落しました。

コメント

コメントする

お名前・メールアドレス・コメントは必須です。
メールアドレスは公開されません。

トラックバックURL