2018年自動運転バスの現実

30 9月 2018

小田急電鉄と神奈川県が江ノ島ヨットハーバーから江ノ島駅付近まで約1km往復の自動運転を実験した。産経新聞より:

2018.9.28 18:17配信)

江の島で自動運転バスの実証実験実施 五輪にらみ セーリングW杯の観客ら輸送

実証実験で江の島周辺を走る自動運転バス=神奈川県藤沢市(川上朝栄撮影)

実証実験で江の島周辺を走る自動運転バス=神奈川県藤沢市(川上朝栄撮影)

画像出典:Wikipedia

8人乗り小型バスには障害物や歩行者を検知するセンサーや乗客の安全性を確認するための車内カメラ、衛星利用測位システム(GPS)などを搭載。一般車両や自転車、歩行者が行き交う実際の路線バスルートでの実証実験で、路上駐車の自動車や歩行者をよける際には運転手がハンドル操作を行った。

また、道路の位置情報をデータ認識しており、横断歩道で自動的に一時停止。走行中の車内で乗客が立ちあがると、車内カメラがその姿を認知し、安全確保のため座席に座るよう促す車内放送が流れる仕組みだ。小田急電鉄では「自動運転バスの実用化に向けたサービス面の検証にもつなげたい」としている。

本番ではレベル4を

同社はドライバー不足が深刻化するなか、「(ドライバーが必要ない)自動運転バスの早期実用化は大きなテーマ」としており、新技術の活用で先進的な沿線のまちづくり推進を目指す方針だ。

試乗会では同県の黒岩祐治知事や藤沢市の鈴木恒夫市長らが参加。黒岩知事は「スムーズな走りで、技術の進歩を実感した。体験すれば、事故や暴走の不安を払拭でき、自動運転を受け入れる基盤ができる」と将来的な実用化に期待を寄せた。

東京五輪本番では江の島で、「レベル4」と呼ばれる運転手が乗車しなくてもいい「高度自動運転」の実施を目指しているが、自動運転技術を提供した「SBドライブ」(東京)の担当者は「江の島は歩行者の往来や違法駐車が多く、何らかの交通規制をしない限りレベル4の無人運転は難しいかもしれない」とするなど、実現に向けたハードルも高いのが現状。五輪が日本の自動運転技術を世界にアピールする機会となるか、注目されそうだ。

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LEVEL4とは、人工知能AIの搭載ができて初めて可能になります。でもAI搭載はいつになりますか?

一方、この自動運転バス試乗記があります。ITMediaビジネス(2018/09/21 07:30 配信)より:

自動運転路線バス、試乗してがっかりした理由

クルマの自動運転には2つのカテゴリーがある。一つはマイカー、もう一つはシェアカーやバスなどの公共交通だ。小田急電鉄は9月6~16日、神奈川県藤沢市の江の島で、自動運転による路線バスの実証実験を行った。9月11~16日は公募による一般モニター試乗も実施された。いまのところトラブルの報道はないから、無事に終わったのだろう。しかし、ネット上で一般モニターの感想を探すと、極めて少ない。おそらく、期待したような乗りものではなかったからではないか。私は9月6日の報道公開日に試乗した。そして正直、がっかりした。原因は自動運転バスの出来が悪いとか、運用の段取りが悪いとかではない。きっと私の期待が大きすぎたせいだ。公道を混合交通で走らせる自動運転である。難易度は高い。どんなささいな事故もあってはいけない。トラブルがあれば、自動運転そのものが否定されかねない。ならば安全策をとる。運転手を乗せて手動運転に切り替えながら走るのだ。

●ちっとも「自動」ではなかった

自動運転の様子を振り返ると、まず出発点の小田急ヨットクラブ駐車場から公道に出るまでは運転手が操作する。本来の路線バスの走行とは異なるし、道路脇の歩道を越える必要がある。安全を考えれば納得だ。しかし、公道を走り始めると、路上駐車の車両を避けられない。自動停止するから、運転手がハンドルを握り、前後左右を確認して対向車線にはみ出して、駐車車両の脇を過ぎて元の道に戻る。 江の島は観光地だし、路上駐車に出くわす頻度は高い。駐車車両があるたびに手動運転の連続だ。この日だけではないかもしれないけれど、警察車両が巡回して駐車車両に移動を命じていた。警備会社も駐車車両に対して移動をお願いしている。それでも路上駐車は多い。9月9~16日に開催されたセーリングワールドカップシリーズ江の島大会の準備のためのトラックもしばしば見られた。一般モニターの乗車日はワールドカップの開催日に合わせたというから皮肉な結果だ。

駐車車両をやり過ごし、自動運転で短い距離を走って横断歩道の手前で停車。これは正しく動作している。しかし、発車は手動運転だ。観光地の横断歩道は人が途切れにくいし、遠方から走ってきて立ち止まらない横断者もいる。このときは厄介なことに、横断歩道手前に立ち尽くし、スマホを眺めている人がいた。この人は立っているだけか、不意に横断するか。自動運転バスはその判断ができないようだ。

江の島を出ると、江の島大橋は歩車分離式の片側1車線の車道になる。ここは自動運転で快走する。江の島入り口交差点で左折までは自動運転。しかし、混雑している折り返し地点は手動運転だった。帰りに交差点を右折して江の島大橋に差し掛かるまでは手動運転である。自動運転らしい振る舞いは江の島大橋の上だけだ。その橋の上で、先行する自転車を追い越す場面があったが、ここもやはり手動運転だった。

この自動運転バスの試乗会には多くのメディアが参加していた。それらが報じた内容が興味深い。「従来のバスと同じ乗り心地」、そりゃそうだ。走行系統や内装は従来のままだ。「従来のバスと変わりない走り」、ほとんど手動運転だから当然だ。皮肉か。いや、彼らは私よりずっとバスや自動運転に詳しいのだろう。その上で肯定しているのかもしれない。でも、それは情報の受け手に対して説明不足ではないか。ちなみに、当日は親しくしている通信社の記者が来ていたが、私と同じ感想だった。

●試乗会の真意は「現状を知ってもらうこと」か

江の島は2020年の東京五輪でセーリング競技の会場となる。小田急電鉄と系列の江ノ電バスは、このときにバス路線で自動運転を実施し、日本の技術を世界にアピールする意向だ。しかし、上記のように現状では混合交通に対応できない場面が多い。自動運転バスを運行する場合は、道路を閉鎖したほうがいい。そうなると混合交通に対応した自動運転バスではないわけで、悩みどころだろう。

自動運転バスの実証実験は小田急電鉄、小田急グループの江ノ島電鉄が行った。技術的なサポートはソフトバンクグループのSBドライブが参加する。また、神奈川県は「ロボット共生社会推進事業」を推進しており、自動運転バスにおいても連携している。

SBドライブは自動運転バスのシステムを完成させ、多くの路線で採用させれば利益になる。神奈川県はロボットが社会に溶け込み、生活を支えるパートナーとして活躍する「ロボットと共生する社会」の実現に向けた取り組みを推進している。どちらの話も理想が高い。実現させる未来は遠いかもしれないけれども、諦めてはいけない。

しかし、小田急電鉄がバスの自動運転に熱心な理由は、喫緊の課題である「人材不足」と「高齢化社会」だ。沿線の総人口は2035年までに約516万人から約490万人へと約5%の減少が見込まれている。生産年齢人口は約335万人から約288万人へ、約15%の減少だ。バスドライバーの減少にもつながる。一方で、バスなどの公共交通に頼る人々、つまり高齢者や自動車非保有者、運転免許取得資格のない18歳未満の総計は、現在の約301万人から約321万人に増加する。

乗客は増える。バスのドライバーは減る。これは小田急沿線に限った話ではない。九州にバス路線網を築く西日本鉄道は3月のダイヤ改正において、ドライバー不足を理由に福岡市近辺の路線バスを減便した。高知県のとさでん交通は3月、「地方のバス事業者が抱える課題とその早急な対策の必要性について」と題した資料を公開した。

小田急電鉄で問題が深刻な理由は、小田急グループで6社のバス運行会社を抱えており、乗り合いバス保有数で日本一だからである。その保有台数の合計は約3500台に上る。また、小田急電鉄本体の鉄道事業にとって、駅と家、駅と会社などのラストワンマイルをつなぐ役目としてバスがある。バスが減便すれば、鉄道の利用者減にもつながりかねない。もちろん、バスが不便な街に人は住まないから、不動産、流通など全ての業界にとって危機感がある。

そこで、路線バスを自動運転にして人材難を乗り越えたい。しかし、現状の自動運転は理想からは遠い。これでいいのか。そこまで思い至ったとき、私は小田急電鉄の勇気に敬服した。小田急電鉄は、危機的な状況を自らさらしてみせることで、公共交通に対する警鐘を鳴らし、自動運転技術の発展のために多くの課題解決策が必要だと知らしめたのだ。

●あらためてバス運転手の高度な仕事ぶりを知る

待ったなしの状況の中で、自動運転の開発は急務。運転手不足はバスだけではなく、鉄道でも始まりつつある。2017年9月、日経ビジネスが「鉄道の自動運転 JR東日本が始動」と特報を打った。また、読売新聞は8月13日付で「山手線や東北新幹線、自動運転検討…運転士不足」と、JR東日本が電車の自動運転に取り組んでいると報じた。この記事は現在は削除されているようだ。

JR東日本も公式Webサイトの「技術革新中長期ビジョン」で自動運転に触れているし、2015年に東京大学生産技術研究所教授の須田義大氏を招いて講演会を開催した。また、12月からはBRT(バス高速輸送システム)路線でバスの自動運転の技術考証を実施する。

自動運転技術は必要だ。開発は続けるべきだ。しかし運用に関しては慎重にならざるを得ない。今回の江の島の実証実験で、あらためて「バス運転手の技術や気配りの重要性」を知った。江の島と短い橋の上は、駐車車両や低速の自転車、バスを追い越す乗用車、動きを予測しにくい歩行者など、混合交通の縮図だった。

普段乗っているバスを振り返れば、車内の乗客への配慮も必要だ。ネットで検索すると、乗客同士のトラブルを気配りで解決してくれたバスドライバーの目撃談がいくつか見つかる。今回の自動運転バスでは、乗客の姿勢を検知し、走行中に立ち上がる客に注意喚起の自動放送を流す仕組みがあった。また、乗客の不穏な動きをチェックして、コントロールセンターから監視する仕組みもある。居眠り、寝過ごしも警告してくれるかもしれない。しかし、自動運転バスは酔客や痴漢にどう対処するのか。異常を認知してから警備員を派遣していては、初動が遅くなる。

鉄道ではこんな話もある。朝日新聞8月30日付の記事「畑に急病人『救助に向かいます』 快速列車止めた運転士」によると、JR東日本の米坂線のワンマン運転の運転士が、畑で倒れている男性を発見し、列車を停止して救助した。めったにないことだけど、自動運転の列車で同じことができるだろうか。道端で倒れている人が居ても、進路の外であれば、自動運転バスは通過してしまうだろう。

江の島大橋で実証実験中のバスが自転車を追い越した。中央のオレンジラインを超えていない。このときは手動運転だった© ITmedia ビジネスオンライン 江の島大橋で実証実験中のバスが自転車を追い越した。中央のオレンジラインを超えていない。このときは手動運転だった

一方、ネットではバス運転手の悲鳴に似た声も見つかる。朝夕に乗客が集中する路線では、日中の閑散時間帯も待機を命じられる。この時間は勤務扱いで、外出や一時帰宅もできない。あるいは、待機を命じられてもその時間帯は就業と見なされず、給与の算定外になるといった話もあった。バスの運転手不足は、人口減少だけではなく、待遇にも理由がありそうだ。人材不足だから自動運転、ではなく、なぜ人材が不足しているのか、その研究と対策のほうが重要な気がする。

公道を走るバスは、普段私がテーマとしている鉄道とは異なる分野である。無知であることも認めなくてはいけない。しかし、鉄道とバスの自動運転を比較すると、バスは実用には程遠い。将来、自動運転バスが走る街と、運転手がバスを走らせる街があったとして、どちらを選ぶか。私は今まで通り、生身の運転手がバスを走らせる街に住み、乗降時に「お願いします」「ありがとう」とあいさつを交わしたい。

(杉山淳一)

杉山淳一さんについて:

杉山淳一(すぎやま・じゅんいち)

1967年東京都生まれ。信州大学経済学部卒。1989年アスキー入社、パソコン雑誌・ゲーム雑誌の広告営業を担当。1996年にフリーライターとなる。PCゲーム、PCのカタログ、フリーソフトウェア、鉄道趣味、ファストフード分野で活動中。信州大学大学院工学系研究科博士前期課程修了

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このひと本当に大学院博士前期課程を卒業しているのだろうか? 自動運転の必要性を全く認識していないと思います。単に運転手と挨拶を交わしたいから人間の運転手がいいというのはノスタルジックの何者でもないです。こども。自動運転がいいのは、安全性が飛躍的に高まるからです。自動車評論家、鉄道評論家というのはこの程度なのですね。このひと51歳にもなるのですよ。

 

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