NHKためしてガッテン(2017年4月26日放映)に物申す

24 6月 2017

今(2017年6月23日)を去ること2か月前のNHKためしてガッテン『大型連休の前に「家族を交通事故から守りたいSP」』でわたしの恩師九州大学名誉教授松永先生が『ペダル踏み間違い事故』についてご意見を述べられていました。わたしは先生のご意見と次の3点で違った意見を持っています。

1.ペダル踏み間違いの発生原因

(松永先生):アクセルからブレーキを踏むべきところで、携帯の着信音など気を削がれるようなことや何か咄嗟のことが起きることでペダルの踏み間違いが起こると述べておられます。

(大野):この形態の事故の96%は実に他愛のない、緊急性や突発性のない状況で発生しています(米国ノースカロライナ州警察データベース 踏み間違い事故前走行状況)。例えばコンビニ等の平面駐車場に駐車するときなど、ブレーキが必要な場面でアクセルを踏むことから事故は始まっています。

わたしはこのため、『ペダル踏み間違い事故』ではなくて『ペダル踏み換え忘れ事故』と呼んでいます。

事故走行前操作1 20171.23

 

2.防止法

防止法その1:

(松永先生):先生は「ためしてガッテン」のなかで『アクセルはゆっくり踏む癖をつけましょう』と言っておられます。そうすればペダルの踏み間違いが起こってもクルマはゆっくり発進するのでブレーキを踏む余裕が生まれるといっておられます。

(大野):それはあくまで運転者がアクセルを操作する要領についていっておられるだけで実際の状況とは著しい乖離があります。

車体を停止乃至は減速させるためにブレーキを踏む強さで誤ってアクセルを踏むから車体の急加速が生まれると思います。

防止法その2(運転者は何故アクセルから足を離せないか?):

(松永先生):ノーコメント

(大野):イギリスポーツマス大学のジョン・リーチ博士が言っておられるようにこれは死の恐怖に曝された人間(運転者)の『生理的な反応』であるとする学説に全面的に賛成です。足を突っ張って離せなくなるのも生理的な反応です。また、暴走中人間の脳は『機能不全』に陥ります。脳が機能不全に陥ると何も考えられなくなります。

3.踏み間違い実験について

(松永先生):運転者に外乱(携帯着信音など)を与えれば再現可能。『ためしてガッテン』で実施された実験では段ボール箱に突っ込んでいましたが暴走には至りませんでした。

(大野):暴走は無意識での踏み換え忘れから始まり、このことは再現不能です。したがって暴走の再現実験はできないと思います。

画像出典:Wikipedia

 

動画出典:youtube NHKためしてガッテン 踏み間違いは33:30くらいからです。

 

コメント

  1. 葛の葉 より:

    以前にクローズアップ現代で松永教授の「実験」が紹介されていたが、はっきり言って噴飯物。例えばバック時の踏み間違い「実験」だが、私ならまずしっかりブレーキを踏み込んだ上で身体を後ろにねじる。以後の後退は基本的にブレーキの踏み加減で行い、必要な場合だけアクセルをわずかに踏む。足の動きはブレーキペダルとアクセルペダル間の往復だけに限定される。感覚だけでペダルの位置に正しく足を移動するなど不可能。タイピングと同じで、まず足をホームポジション(ブレーキペダル)に置いた上で、そこからの相対的な位置関係だけで移動を行う。必要がない時は必ずホームポジションに戻す。こう言う視点が全く欠けていた。要するに運転論抜きに現象をもてあそんでいただけ。今回の「実験」も「間違わないためにどうすれば良いか」という視点が全く欠けている。

  2. 葛の葉 より:

    この「事故走行前操作1」だけではよく分りませんが、「例えばコンビニ等の平面駐車場に駐車するときなど、ブレーキが必要な場面でアクセルを踏むことから事故は始まっています。」は確かです。
    ところが、「ブレーキが必要な場面」で最も機会が多いのは赤信号で停止するとか一時停止箇所とかだと思いますが、そういう場面での踏み間違い事故というのはほとんど聞きません。目の前に歩行者が飛び出してあわやというような場合、携帯のベルなどよりもはるかに気が動転するはずですが、「ブレーキが間に合わなかった」事故は聞いても、そこで「ブレーキのつもりでアクセルを踏み増した」というのは聞いたことがありません。
    これは何を意味するかと言えば、アクセルを踏んで通常走行しているときに、「ブレーキが必要な場面」が生じても、ペダル踏み間違いもしくは『ペダル踏み換え忘れ事故』はほとんど生じていないと言うことです。
    2010年に放映された最初の実験は、被験者はとりあえず何もすることがない状態で画面を眺め、出てきた文字に応じてブレーキまたはアクセルを踏むというものでした。これは現実の運転とは何の関係もない単なる間違いやすいゲームです。
    多少とも現実をシミュレートしようと思うのなら、教習所のシミュレーションのように、アクセルを踏む度合いと画面が動く度合いが連動していなければなりません。(私も教習所でシミュレーションを受けましたが、「ブレーキが遅い」「踏み方が弱い」という指摘は受けたものの、初心者未満でさえ『ペダル踏み換え忘れ』など皆無でした。)そこで、(ABの文字などでなく)信号が赤になる、子供が飛び出してくるなどの事象があれば、ほぼ100%ブレーキに足が行くでしょう。
    結局、通常走行時の踏み間違い(『ペダル踏み換え忘れ』)はほとんど生じないのに、駐車場の駐車や発進時にはなぜそれが多発するのか(バック時も同様)。その点の問題意識が欠けている人に、この問題を探求する資格はないと思います。

    • 大野一郎 より:

      葛葉さま
      コメントありがとうございました。駐車時の駐車発進は、一例です。踏み間違い事故は、通常走行でも、バックでも発生しています。米国ノースカロライナ州警察データベースの統計がありますので通常メールで送信申し上げます。
      「これは何を意味するかと言えば、アクセルを踏んで通常走行しているときに、「ブレーキが必要な場面」が生じても、ペダル踏み間違いもしくは『ペダル踏み換え忘れ事故』はほとんど生じていないと言うことです。」通常走行時にもたくさんの踏み換え忘れ事故は発生しています。
      大野一郎

      • 葛の葉 より:

        バックの場合は、ほとんどがクリープ走行主体になりますね。

        問題は通常走行の場合です。
        私が言う「通常走行」とは、「アクセルを踏んで通常走行しているとき」のことで、下り坂その他の惰性走行は除きます。

        つまり、「アクセルを踏んでいる」という強烈なバイアスがかかった状態で停止の必要が生じたときに、さらにアクセルを踏み増すという『ペダル踏み換え忘れ事故』が最大割合で生じているとは信じがたいと言うことです。

        これは松永氏の「アクセルを踏んでいる頻度が高いので、とっさにアクセルを踏む」という説への根本的な疑問でもあります。アクセルを踏んでいるからこそ、そこからブレーキへの移行は反射的に行われるのです。

        統計資料は、集計側の問題意識によって項目分けが変わってきます。日本における、具体的な事故状況のレポートをさらに研究する必要があると思います。

        • 大野一郎 より:

          ケン・セイショウさま

          コメントありがとうございます。詳しくはメールでご返信させていただきます。

          大野一郎

  3. 葛の葉 より:

    最初のコメント、少し表現に行き過ぎたところがありましたが、掲載していただいて恐縮です。
     さて、「事故走行前操作1」で、「事故前の運転状況 前進 39%」が最大です。要するに普通に進んでいるときと言うことです。上に、「アクセルを踏んでいるという強烈なバイアス」と書きましたが、よく考えると居眠り運転でもアクセルは踏んでおり、全く無意識と言うこともありえるわけです。

    ところで、居眠り運転になりやすいのは単調な一定速度が続く場合で、起伏やカーブの多い道では考えにくいです。要するに運転中にボーッとしていると踏み間違えやすいという非常に当たり前のことで、ボーッとしやすい(できる)道路がアメリカの方がかなり多いと言うことではないかと想像します。

  4. 無菜 より:

    こちらのサイト、とても参考になります。

    駐車場の料金支払機のところで、ふみ間違いが起きる。事故もそこで起きている。
    そこでこまめにハンドブレーキをしっかり引いておけばいいのでは、と思います。ATはクリープ現象があるので、勘違いしやすい。アクセル踏んでもブレーキで動かない。
    自分も、ときどきやらずにすませてしまうので、確実性ということで自信はないんですが・・・

    ところで、左足ブレーキ始めました。
    アクセルは右足でしか踏まない、ブレーキは左足で踏む、理屈上はこれで、踏み間違えはしないはずですが、いざというとき、左足のブレーキを踏めるかどうか、まちがえて右足で、というのが自信がありません。

    やはり、機械的にクルマ側で歯止め装置は必要だと考えます。運転する人の万人ができる対策を考えたら。

    • 大野一郎 より:

      無菜さま
      コメントありがとうございます。左足ブレーキは、現行のペダル配置で実施すると、ちょっと危ないところがあります。体幹が右に捩じれますのでシートベルトが正しくかからなかったり、エアバッグから顔がずれたりします。わたしはこの左足ブレーキ装置を製品化していますので、是非左足ブレーキ専用の装置をお使いいただきたいです。咄嗟のときに左足ブレーキは踏むことができます。装着後すでに3万km公道走行しています。詳細についてはまたご連絡ください。
      大野一郎

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