そもそも「過失」とは何か? ということを考えてみます。
日本で「過失」といえば、「過ち≒間違い」と思う人が大部分ではないでしょうか?
ところが、「過失」の英訳はWeblio辞書によれば「negligence」となっており:怠慢、手抜き、不注意、手抜かり、むとんちゃく(無頓着)さ、気にしないこと、(不注意による)過失となっております。 おやおやぁ?
ペダル踏み間違いとどう関わるのか考えてみます:
怠慢(怠った):これですかね? 「間違い」とは違いますね。
手抜き:これではありません。
不注意:?
てぬかり(手抜かり):?
むとんちゃくさ(無頓着さ):なんかしっくりきませんね。
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ペダルの踏み間違いといいますが、2つのことが考えられます。
それは:
➀ ペダルを踏もうとして踏み間違えたこと(緊急時など)
➁ ペダルの踏み換えを忘れてしまったこと (あるいはすでに踏み換えたと思いこんでしまったーボーっと)
コンビニに突っ込む典型的なペダル踏み間違い事故は、➁の方が圧倒的に多いのではないかと思われます。
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法律的には、過失が発生した原因として「予見可能性」があったかなかなかったかということが刑事罰の対象になるかどうかになります。
つまり、自分も「踏み間違い」をするかもしれない? ということを予見できたかできなかったかということです。それを裁判所が判断する訳です。
飯塚もと院長は「業務上(日常的に運転していたという意味)過失致死傷罪」容疑で送検され、「踏み間違いの予見可能性」の程度で刑事罰量刑が判断されます。
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ここでまた、飯塚幸三もと工業技術院院長のペダル踏み間違い事故を例にとって、時系列で考えてみたいと思います:
事故のそもそもの発生は、一般道路を走行中、もと院長は、レストランの予約時間に遅れそうだということが気がかりだったそうです。
そして、助手席に同乗していた妻が「あなた運転がおかしい」と言ったと証言しています。そして、「おかしい運転」のまま道路左側のガードレールに接触。
・「運転がおかしい」といわれたのは、すでにブレーキではなくアクセルを踏んでいたからではないでしょうか? これは特段の緊急事態ではないので上記②のケースです。
・そしてブレーキと思いこんでいるため、さらにアクセルを踏みこんだため ➡ 道路左側ガードレールに接触 ➡ さらにアクセル(ブレーキと思いこんでいる)を踏みこむため暴走状態となる
・暴走状態による「恐怖」のため前頭前野皮質部分に機能不全が発生 ➡ 機能不全が脳全体に拡がる
・クルマの制御がまったくできない状態
画像出典:wikipedia
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さっきの「過失」=「(過失の)予見性」に戻ります。このことが飯塚もと院長の「過失傷害致死(刑事罰)」容疑の根底を形成しているからです。すなわち、ペダル踏み間違い発生の可能性を予見できたのか、できなかったのかという問題です。
予見できたのにそれをしなかったのはネグレクト(怠った)ということです。
あれれ~?
これは飯塚もと院長だけの話でしょうか??
毎日のように発生している「ペダル踏み間違い事故」。当然みなさん、もしかして、自分もやってしまうのではないか? という思いを持っておられる人も多いのではないでしょうか?
とすると:
みなさんが不幸にして「踏み間違い事故」を起こし、人を傷つけたり、死亡させててしまったら:
ペダルの踏み間違いを予見していたにも拘わらず:
それを防止することを「怠った」ことになります!
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ちょっと脱線して2010年に報告があった2005年から2007年の年齢別踏み間違い事故件数についてご報告します:
アクセルとブレーキペダルの踏み間違い事故件数の推移と特徴
アクセルとブレーキのペダルを踏み違える事故は、近年多発しているように見えます。しかし、実は2004年の7,660件から2013年の6,402件へわずかですが減少しています。
ただし、全体の人身事故件数が同期間で839,343件から566,357件へ約33%も減少しているのに対して、踏み間違い事故の減少率は小さいので相対的には増加傾向を示しています。6,402件は、平均すると毎日20件弱も起きていることになります。大きなニュースとして報道される事故以外にも多数起きています。
参考・国際交通安全学会「平成22年度研究調査報告」
『平成17〜19年の合計データ』を分析したグラフ
踏み間違い事故を、29歳以下、30歳代、40歳代、50歳代、60歳代、70歳代以上の年齢区分で分けると、年齢別の全交通事故件数に占める踏み間違い事故を起こす比率は、70歳以上が他の年齢層の約2.5倍から約4倍と極端に高くなっています。
なお、踏み間違い事故の絶対件数は、29歳以下がもっとも多く、70歳代以上の1.4倍です。その他の年代でも、極端に低くありません。
踏み間違い事故の年代別の構成比や、年代別の全事故に占める踏み間違い事故件数の比率を調べると、以下の「年代別の踏み間違い事故件数構成比」の表です。
記事と表出典 自動車保険ガイド
以下のデータはすべて2007年から2009年の3年間のデータです。現在は、高齢化がさらに進んでいるため、高齢者の踏み間違い事故比率、絶対件数の2つともに多くなっていると考えられます。
年代別の踏み間違い事故件数構成比
年代 | 踏み間違い事故比率 |
---|---|
29歳以下 | 27.4% |
30歳代 | 13.1% |
40歳代 | 10.5% |
50歳代 | 14.1% |
60歳代 | 15.4% |
70歳代以上 | 19.5% |
年代別・男女別全交通事故に占める踏み間違い事故の構成比
男女合計 | 男性 | 女性 | 女/男 | |
---|---|---|---|---|
29歳以下 | 1.00% | 0.87% | 1.26% | 1.4 |
30歳代 | 0.61% | 0.50% | 0.82% | 1.6 |
40歳代 | 0.64% | 0.54% | 0.80% | 1.5 |
50歳代 | 0.78% | 0.62% | 1.12% | 1.8 |
70歳以上 | 2.49% | 2.43% | 2.81% | 1.2 |
どうですか? ペダル踏み間違いはどうやら高齢者だけの問題ではないようですね。とすると、飯塚元院長の事故は、全年齢層に起こり得る事故ということになりませんか?
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この飯塚もと院長は、「過失傷害致死罪」で送検されました。この「過失」は、「ペダルを踏み間違うことが予見されたのにその対策を講じることを怠って2人を死傷させ、10人を負傷させた」というものです。
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「予見されたのにその対策を講じることを怠る」とはどういうことでしょうか?
ペダル踏み間違いを防止する対策とは何でしょうか? それは運転者の「注意」だけでできることでしょうか?
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メーカーはこれを防止するために「電子的装置」(自動ブレーキ、加速抑制装置)などを採用しています:
しかし、
「自動ブレーキ」は、運転者がアクセル(運転主要装置)を踏んでいる状態で:それが意図したものか、あるいは意図しないものであるか判断できないため、自動ブレーキは解除状態(運転者が主要な運転装置 ハンドル、アクセルまたはブレーキ等を操作した場合、自動ブレーキは解除される)となり、パダル踏み間違い事故は運転者がアクセルを踏んでいるためそもそも効果が全くありません。
「加速抑制装置」は、作動範囲が停止~15km/h程度となっているために飯塚もと院長のように50km/h付近から発生している事故には効果がありません。
何故かというと「自動ブレーキ」のように運転者が意図してアクセルを踏んでいるのか誤って踏んでいるのか機械は判断できません。だからこれは自動装置として大原則に反している訳です。だって15km/h以下でも運転者が意図的にアクセルを踏む状況がないとはいえません。
その意味ではかなり「姑息」なやり方ではないでしょうか?
何故、何が何でも「電子的」な方法で「踏み間違い事故」の防止を図らなければならないのでしょうか?
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わたし個人の意見としてお断りをした上でメーカーが何故「電子的」装置に拘るのか考えると:
それは、現行ペダル配置に「欠陥」があることを隠したいからだとしか思えません。欠陥を認定されれば「リコール」の嵐です。そうなったらエアバッグタカタの非ではなく全世界の自動車メーカーの倒産とならざるを得ません。アンタッチャブルです。
しかし、それは現実的な解決方法ではありません。だから全世界の行政監督官庁が現行ペダル欠陥について「免責」する方法です。
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2019年現在、ペダル踏み間違いを防止するヒューマン・マシン インターフェイスからの装置、決定版は:
画像出典:大野一郎
どうでしょうか、みなさん。この装置を自信をもって「踏み間違い防止」にお勧めします。
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