わが国の事故調査機関の欠点について

19 8月 2016

2016年8月3日の『自動車事故調査組織(公的機関)の立ち上げについての提案』という先の掲載で少し追加したい意見があります。先ず申し上げたいことは、日本の運輸安全委員会には自動車事故の原因調査部門がないということです。早急にこの部門を立ち上げて欲しいと思います。次に、運輸安全委員会というのは、国土交通大臣の下に属する組織であり完全な独立調査組織ではありません。この点アメリカの国家輸送安全委員会などの組織とは違います。この組織は議会(すなわち国民)の直属組織となっています。日本では航空でも鉄道でも海難でも報告書は国土交通大臣に報告提出します。さて、どこが違うかというと、例えば航空事故を例にとると、事故原因が機体の欠陥を疑われた場合、国土交通省の航空局が機体の型式証明を認可していますから国土交通大臣がその責任を負うこととなり、いわば公平な立場とは言い難いからです。自動車事故の場合でも同じことです。したがって、福島第一原発事故原因調査に国会事故調というのがあり、そのスタイルをそのまま使えばいいと思います。

次に何故委員会組織にするのかという疑問です。イギリスの航空事故調査を始め委員会制度にしているのはアメリカと日本だけです。日本のJTSBはアメリカのNTSBの完全な真似なので仕方がないところもあります。NTSBの委員会とJTSBの委員会の違いは、委員の質の違いです。日本で委員に任命されるのは必ず『学識経験者』です。つまり学者です。しかし、わたしが航空事故調査官のときに感じたことは、いつも委員の先生が仰ることは『机上の空論』だなということでした。学者の先生もそのことは自分自身十分ご存じしたので、さっぱり議論が深まらないと感じることがままありました。アメリカのNTSBは違います。委員の先生に飛行時間2万時間以上というような本当のプロフェッショナルが就任していますので、ちょっと違います。うらやましく思ったこともありました。この前、運輸安全委員会の調査官募集に要項に民間人向けパイロット出身調査官募集があり、飛行時間6500時間以上とありましたので、少し変わってきたかなと思いました。(下図出典:国土交通省運輸安全委員会より)

 

sosikizu

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