東池袋ペダル踏み間違い事故裁判について(10/12修正版)

10 10月 2020

東池袋でペダル踏み間違いによる事故の運転者、旧通産省工業技術院々長飯塚幸三さんの裁判が始まりました。この事故では、自転車に乗っていた親子が死傷しました:

踏み間違い事故、本当に悪いのは誰か?

2019年5月に発生した事故、運転者自身が負傷したこともあり、2020年9月になってから裁判が開かれました。以下Yahoo!ニュースから:

「車に何らかの異常」池袋暴走事故で元院長が無罪主張、今後の裁判はどうなる?

前田恒彦元特捜検事2020年

東池袋で車を暴走させ、横断歩道の母子を死亡させたうえ、男女8人と助手席の妻に重軽傷を負わせたとして起訴された旧通産省工業技術院長の男(89)が、初公判で無罪を主張した。今後の見込みは――。

否認の内容は?

男は、ブレーキとアクセルの踏み間違いによる事故だと主張する検察側に対し、「アクセルペダルを踏み続けたことはない」「車に何らかの異常が生じたから暴走した」と述べた。

弁護人も、車両の制御システムに突発的な異常が生じた可能性があるとして、過失運転致死傷罪は成立せず、無罪だと主張した。

事故当初は「ブレーキを踏んだが効かなかった」と供述しており、その後、「パニック状態になってブレーキとアクセルを踏み間違えた可能性がある」と供述するに至ったとの報道もあったが、結局は振り出しに戻った形だ。

争点と立証は?

この結果、車両の性能が正面から裁判の争点になった。

車両に何も異常がなく、ブレーキとアクセルの踏み間違いこそが事故原因に間違いないという点は、有罪を主張する検察側が証拠により証明しなければならない。

(大野註:それはおかしいですね。論理的に言えば、飯塚さんがクルマが暴走したと主張するなら、その立証責任は飯塚さん側にある筈です。所謂悪魔の証明といわれるものです:

悪魔の証明

読み方:あくまのしょうめい

悪魔の証明とは、証明が到底不可能な事柄のことであり、そのような証明不可能な事柄について「証明せよ」と迫るような振る舞いのことである。今日では「存在しないことを証明する」「疑惑が事実でないことを証明する」という意味合いで用いられる。悪魔の証明は、通俗的には、「この世には悪魔など存在しないというなら、それを証明して見せよ」という問いかけに対して行われる。これは「消極的事実の証明」の問題である。もし対象が存在するならば、物的証拠の提示によって存在が証明され得るが、存在しないものを証明するとなると、「証拠がない」というだけでは(単に未発見であるだけかもしれず)存在を否定することにはならない。概して不可能である。従って、「証拠がない」ということが「ないことを証明する」ことにはならない。(以上Weblio辞書)
(大野註:)
そこで、飯塚さん、弁護士が「クルマが勝手に暴走した。自分はアクセルを踏んでいない」とする主張は、誰に立証する責任があるのでしょうか? 法律事務所の見解は:

虎ノ門桜法律事務所

2015.05.12更新

証明責任(立証責任)は、どちらが負う?

霞が関パートナーズ法律事務所の弁護士伊澤大輔です。

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ざっくりというと(例外もあります)、証明責任は、請求をする者(権利を主張する側)が責任を負います。

 

例えば、事故によって損害を被ったという場合には、損害賠償請求をする被害者の方で、事故が発生したことや、損害を被ったこと(損害額)、事故と損害との間に因果関係があることを立証しなければなりません。時々、被害者の方で、「なんで被害者なのに、色々と立証資料を準備しなければいけないんだ!」と言われる方がいらっしゃいますが、上記のとおり、損害の立証責任は被害者が負っており、これをに果たさないと、請求が十分に認められないおそれがあります。

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(大野意見)

UUUUM、つまり「クルマが勝手に暴走した」ということを誰が証明しなければならないのか??

上記の弁護士さんの言っていることは損害弁済のことであって、刑事事件裁判には当てはまらないのでは? 刑事裁判においては、クルマに異常があったかなかったかについて検察・警察が調べることになるのでしょうね。

つまりクルマの異常は、検察(科捜研)が証明し、裁判所が判断するということになるのではないでしょうか?

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そこで、検察側は、メーカーや専門家による鑑定結果、ドライブレコーダーや現場周辺の防犯カメラ映像の分析結果、車両に搭載されていたイベントデータレコーダー(EDR)の分析結果、後続車両の目撃証言などによって、各システムの作動状況、アクセルペダルとブレーキペダルの操作状況、車速などを明らかにし、車両の性能に問題がなかったということを客観的に立証することになる。

事故から送検まで7ヶ月を要したのも、男が1ヶ月にわたって入院していたことや、重軽傷を負った複数の被害者の回復を待たなければならなかったことに加え、裁判で否認が予想され、車両の性能に関する裏付け捜査に時間を要したからだ。

弁護側の対応は?

一方、弁護側も、独自に専門家に鑑定を依頼して証人尋問を実施するとか、同じ車種で過去に発生した事故に関する調査結果などを証拠として提出することが考えられる。

また、男が事故前から足を悪くして通院していたことや、認知機能が低下していたことを大きく取り上げ、何が真の事故原因だったのか曖昧にさせるというのも一つのやり方だ。

このあたりは、公判前整理手続で示された検察・弁護双方の立証計画の内容が重要となる。

容疑を否認することで男が被害者や遺族の感情を逆なでし、社会から激しいバッシングを受ける結果となることも予想される。

しかし、すでに男はインターネット上などで徹底的に叩かれ、厳罰を求める39万筆もの署名まで行われているわけだから、弁護側としても主張すべきところはキチッと主張しておくという姿勢ではないか。

同種事案は?

もっとも、死傷者が出た交通事故で運転手やその弁護人が車両の異常を事故原因として主張すること自体は珍しいことではない。

東京都港区で車を暴走させ、歩道の男性を死亡させて過失運転致死罪などで起訴された元東京地検特捜部長が、2020年2月の初公判で「天地神明に誓ってアクセルは踏んでおりません」と容疑を否認し、車の不具合が原因だとして無罪主張をしたのも記憶に新しいところだ。

その後、検察側は事故後の車体検査で故障が見つからなかった事実などを立証したうえで、10月2日の公判で禁錮3年を求刑している。

ただ、車両の性能が事故原因とされ、運転手の過失が否定されて無罪となった例もある。

有名なところでは、2013年に北海道で小型バスを中央分離帯に衝突させて横転させ、乗客13人を負傷させたとして起訴された事故の場合、3年超の裁判を経て、2019年3月の判決で緩衝装置を車体に固定する金属部品の故障で事故が起きた可能性があるとされ、運転手は無罪となっている。

 

今後はどうなる?

過失運転致死傷罪の最高刑は懲役7年だが、今回の事故と同じ時期にJR三ノ宮駅前で神戸市営バスを運転中に歩行者の列に突っ込み、2人を死亡させ、4人に重軽傷を負わせた運転手の場合、求刑は禁錮5年、判決は禁錮3年6ヶ月の実刑だった。

今回の男の場合も、検察側の立証が成功し、結果の重大性や遺族らの処罰感情の峻厳さなどを踏まえたとしても、先ほどと同程度の求刑・判決となるのではなかろうか。

ただ、男が現時点で89歳と高齢であるうえ、健康も害しているようであり、一審、控訴審、上告審までに要する長い時間を考慮すると、いずれかの段階で天寿を全うするかもしれない。

そうなれば、公訴棄却で裁判手続は打ち切りになり、有罪・無罪の結論が確定しないままで終わる。

実刑判決が確定しても、執行できず、服役なしで終わる可能性まで考えられる。被害者や遺族にとっては、無念極まりないことだろう。(了)

前田恒彦元特捜部主任検事

1996年の検事任官後、約15年間の現職中、大阪・東京地検特捜部に合計約9年間在籍。ハンナン事件や福島県知事事件、朝鮮総聯ビル詐欺事件、防衛汚職事件、陸山会事件などで主要な被疑者の取調べを担当したほか、西村眞悟弁護士法違反事件、NOVA積立金横領事件、小室哲哉詐欺事件、厚労省虚偽証明書事件などで主任検事を務める。刑事司法に関する解説や主張を独自の視点で発信中。きき酒師、日本酒品質鑑定士でもある。

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みなさん、確かに飯塚幸三さんは、アクセルとブレーキを踏み間違えて暴走し、親子を殺傷し、助手席の妻を含む男女8人に重軽傷を負わせました。ペダル踏み間違い事故では、ほとんどの場合、何か障害物に衝突してクルマが物理的に動けなくなるまで何もかも撥ね飛ばして暴走します。

これは、ペダル踏み間違い事故なのです。

アクセルペダルを間違って操作すると、クルマは加速します。しかし、運転者は自分が操作したのはブレーキだと思っているため、さらに強くアクセルを踏んでしまう傾向にあります。当然クルマはさらに加速するため、運転者は混乱し恐怖を感じます。この「恐怖」感は、脳の前頭前野皮質という部分に機能不全を引き起こします。脳の一部分でも「機能不全」になれば、それは脳全体に拡がります。

脳が機能不全状態になっているために、運転者はクルマの暴走状態に何もできなくなります。

脳が普通なら:

エンジンを停止させる、ハンドルを切る、ハンドブレーキをかける、ギアをニュートラルに入れるなどなどクルマを停止させる方法はいくらでもあります。

でもなにもできません。

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この事故の本当の原因は何か??

ブレーキ乃至はアクセルを操作する際、二者択一の選択をしたうえで操作しなければならないことに本当の問題があるのではないでしょうか?

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ロンドンブーツ田村淳さんの動画がありました。転載します。

動画出典:youtube 田村さんは、自動車の運転をしますか? そしたらあなたも「ペダル踏み間違い事故」を起こす可能性があります。

動画出典:youtube

この弁護士さんの動画を見て、はっとしました。飯塚もと院長は、2020年現在89歳です。かれは、刑務所には絶対行きたくないのです。誰もがそう思うのは当たり前ですが。

そして弁護士さんと裁判について話し、考えたことは、「自分はもう年だ。裁判を長引かせてその間に死ねばいい」ということだと思います。彼は死にたいのです。本当に悲しいことです。

世間では、飯塚もと院長が裁判で無罪を主張したことを「あんたは鬼だ」といっています(ロンドンブーツ 田村淳さん)。でも工業技術院々長という国家機関の長という職務についておられたあなたは、クルマの欠陥に気が付いたのだと思います。

しかし、いくらクルマに欠陥があっても、右足でアクセルとブレーキを操作することになっている法律がある限り、ペダルを踏み間違えたのは運転者の「過失」です。

そして日本ではこの「過失」が事前に予見することができたとして、刑事罰に問うことができます。

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ペダル踏み間違い事故は、運転者だれにでも起こり得ることです。

この事故を根絶するためには、ペダルの操作方法を変更することしかありません:

画像出典:大野一郎

 

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