ペダル踏み間違い事故ー刑事訴追事案ー東池袋飯塚被告の場合

17 6月 2021

どうしても、ペダル踏み間違い事故=というと母子2人死亡他通行人等9人を負傷させた東池袋事故に行きついてしまいます。

飯塚被告(2020年 90歳)の裁判

このBlogでもさんざん取り上げてきました。ペダル配置の欠陥から発生するこの種事故の加害者に対して、わたしは同情的な部分がありました。同時に踏み間違いを防止しようとすれば簡単にできるのにリコールを怖れて何もしない自動車メーカーに対する怒りもありました。

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最近は少し考え方が変わりました・・・・:

それは、この事故の加害者飯塚幸三被告のことです。2021年89歳、旧通商産業省工業技術院院長という日本の工業技術の頂点に立った人です。しかも東京大学工学系博士:

飯塚 幸三(いいづか こうぞう、1931年昭和6年6月1日生まれ)は、計量学を専門とする日本の研究者、旧通商産業省技官。東京大学工学博士。測定器誤差と形状誤差を分離して真円度・円筒度測定ができるマルチステップ法(大野註:詳しくはhttps://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%A3%AF%E5%A1%9A%E5%B9%B8%E4%B8%89#%E3%83%9E%E3%83%AB%E3%83%81%E3%82%B9%E3%83%86%E3%83%83%E3%83%97%E6%B3%95 参照)の開発者。

15年間委員を務めた国際度量衡委員会では日本人初の副委員長にも就任し、世界軽量記念日を提唱。国際計測連合(IMEKO)では会長を務めた

計量研究所において硬さ測定や形状誤差など測定・計量の研究に取り組み、計量研究所所長、旧通商産業省工業技術院長、クボタ(常務、専務、副社長)を歴任。計測の国際標準化活動にも貢献した。

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たしかに凄い人です・・・。

次は飯塚被告の裁判の様子を事故の時系列に従って抜粋します(東京新聞WEB版より):

13:45 「思ったより早いスピードで…」

 飯塚被告は、普段の運転操作や、事故現場手前の東池袋交差点での状況を説明した。飯塚被告は普段、アクセルとブレーキを右足で踏み分けているのか問われ「その通りです。(事故当日の4月19日も)同じです」と説明。カーブでは「ブレーキペダルを踏んで減速し、カーブに沿ってハンドルを切って、曲がり終わったところでアクセルペダルを踏んで加速します」と述べた。
 事故現場近くの東池袋交差点に差しかかる際は、右足で断続的にブレーキを踏んだと説明。交差点を左に曲がっている最中の右足の位置を問われ、「ブレーキペダルの上においていました。普通、カーブで曲がるときは、いつでも止まれるようにブレーキペダルの上に足を置いていましたので、その時もそのようにしました」と答えた。
 左折中の車の時速は「40キロか50キロあったと思います」と述べた。普段との速さの違いを問われると、少しだけ大きめな声で「速いんです。思ったより速いスピードで曲がってしまいました」と述べた。
 ドライブレコーダーには左折中、「おう」という飯塚被告の声が録音されていた。飯塚被告は「覚えていません」と答えた上で、声が出た理由について「思ったよりスピードが出てしまい、アクセルを踏んでいないのに、不思議に思ったためだろうと思います」と話した。

14:00 7秒の沈黙…「エンジンが異常に高速回転」

 飯塚被告は図面を使いながら、東池袋交差点を左折する準備をした地点や走行ルートを説明。その様子を被害者遺族の松永拓也さんは机上で両手を組みじっと見ていた。
 弁護側に「なぜ左車線に変更したのか」と問われると「いつも左車線を走っていたので」。「カーブを曲がりきったところで車に何か起きましたか」と問われると7秒ほど沈黙。「エンジンが異常に高速回転しました」と回答した。「アクセルペダルを踏んだことは」と問われると「ありません」ときっぱりと述べた。
 「警告音が鳴ったことはありますか」と聞かれると「覚えていません」。当時の速度については50キロ~60キロくらいだと説明。「アクセルペダルを踏んでいないのにエンジンが高回転になり速度も加速した」と述べた。
 意図しない加速が起きたときの気持ちを聞かれると「車が制御できないのかと思って非常に恐ろしく感じました。パニック状態になったと思います」と答えた。
 さらに速度が加速してどう行動したかを尋ねられると「右足でブレーキを踏みました。減速せずにますます加速しました」と話した。交差点を過ぎた後にどうしたかを聞かれると「アクセルペダルを踏んでいないのになぜ加速したのか分からなかったのでアクセルペダルを調べようと思いました。視線を落としてアクセルペダルを見ました」
 「座ったままで見ることができましたか」の問いに「できました。床に張り付いて見えました」。アクセルペダルを確認した時間については「一瞬です」と述べた。
(大野註:物理的にあり得ないです)
「パニックが続いた」という飯塚被告は、前方を見ると、「交差点には赤信号と乳母車を押しているご婦人が右から左へ渡っていた」といい、ブレーキペダルを目いっぱいに踏み込んだ。しかし、「減速しませんでした。非常に抵抗感のある感触でした」。飯塚被告は当時の状況を「踏み続けている間に、すっと抜けるような感じ。抵抗感が急になくなったように感じました」と説明した。
弁護側の質問で「アクセルペダルを確認したときに床に張り付いて見えた」と話したことについて、飯塚被告が「右足はブレーキペダルの上にあったのでそれをわざわざ上げてアクセルペダルを見た」と説明。検察官に「右足は持ち上げただけ?」と聞かれると「はい」と答えた。
 検察官が「警察の検証によれば、もう一つ動きをしないと見えないのではありませんか」と指摘すると、飯塚被告は「覚えていません」。さらに「その足を少し左に寄せないと見えなかったのではないですか」と問われると「ああ、まあ、そうかもしれません」と話した。
(大野註:まったく荒唐無稽なお話しです。クルマの暴走中に足を見るなどできるはずがありません)
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綺羅星のような研究者生活を送ってきた人が人生の最後に泥を塗るようなことになってしまいました。しかも31歳の若い母親と3歳の娘を殺して。
いろいろ言っていますが、本件事故は間違いなく「ペダル踏み間違い事故」です。そして飯塚被告がいっていることを考えると、89歳にもなって物理的に不可能なことを何故強弁するのかという気持ちになってきました。本当のところをいえば「本人は踏み間違い事故であることを理解しているが、刑務所の中では死にたくない。裁判となれば荒唐無稽なことでも一応明白にしなければならないため時間がかかる。そのうち自分の寿命が尽きるだろう」と思っているようにみえます。
若い母親と娘を殺した謝罪の気持ちがみえません。卑怯です。
確かにメーカーは悪い。しかし、クルマの運転操作は、右足でアクセルとブレーキを操作するようになっています。この意味から、飯塚被告は「踏み間違い」という過失を犯したのです。
そしてその結果、2人の人間を殺してしまいました。この責任からは到底逃れることはできません。
さて、運転操作の「過失」から2人の命を奪った行為の「過失」に予見性はあったでしょうか?これだけ踏み間違い事故があるので、クルマを運転する人には「あった」というしかありません。
また、踏み間違いを防止する装置はたくさんあります。例えばわたしは、踏み間違いをするかもしれないので自分が開発した「左足ブレーキ装置」を搭載しています。
画像出典:大野一郎
これが過失予見性に対する回答だと信じています。

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